CopilotとChatGPTの違いと使い分け|業務で選ぶ4つの基準

「ChatGPTは情報が学習に使われるから危ない。だからCopilotにする」。社内の説明でよく聞く理屈ですが、法人向けのプランで比べると、この前提は成り立ちません。Microsoftは基盤モデルの学習に使わないと明記し、OpenAIも既定では学習に使わないとしています。契約上の保護も両社が用意しています(適用される処理の範囲は違うので、そこは後述します)。では何が違うのか。分かれ目は社内データへの繋がり方です。この記事では、公式に書かれている内容を並べたうえで、業務で選ぶときの4つの判断基準と、両方を使う会社が決めることを整理しました。
- 「学習に使われる/使われない」で比べても差が付かない理由
- 本当の分かれ目である社内データへの繋がり方
- 業務で選ぶ4つの判断基準
- 両方を使う会社が決める3つのこと
- 個人アカウントの利用がいちばん危ない理由
「学習に使われるか」で比べても差は付かない
先に対象をそろえます。この記事で比べるのは、Microsoft側がCopilot Chat(追加ライセンス不要)とMicrosoft 365 Copilot(有償の追加ライセンス)、OpenAI側がChatGPT BusinessとChatGPT Enterpriseです。OpenAIのAPIは、業務アプリに組み込む用途なのでプランとは別に扱います。
そのうえで、いちばんよく使われる比較軸から確かめます。公式にはこう書かれています。
| 観点 | Microsoft Copilot | ChatGPT(法人向けプラン) |
|---|---|---|
| モデルの学習 | プロンプトと応答は基盤モデルの学習に使われない | 「既定では、お客様のビジネスデータをモデルの学習には使用しない」(Business、Enterprise、Edu、APIなど)。APIでは明示的に許可することもできる |
| 契約上の保護 | プロンプトと応答はデータ保護補遺(DPA)と製品条項の対象で、Microsoftはデータ処理者として扱われる。ただしBingへ送られるWeb検索クエリは扱いが別で、Microsoftは独立した管理者になる | GDPR対応のため、Business・Enterprise・APIでDPAを締結できる |
| 処理の境界 | プロンプトと応答はMicrosoft 365のサービス境界内で処理される | 提供事業者側の環境で処理される |
| 第三者による監査 | Office 365としてSOC 2 Type 2の保証報告がある | SOC 2 Type 2 の監査を完了している |
| 管理者の統制 | IT管理者向けの制御が用意されている | SAML SSOによる認証と、アクセスや機能のきめ細かな制御 |
| 保持期間 | プロンプトと応答は監査・eDiscovery のためにExchangeへ記録される。保持ポリシーを適用できる | Enterprise等では保持期間を利用者側で制御できる。削除した会話は原則30日以内にシステムから削除される |
上の表はどちらも法人向けプランの話です。実務でいちばん事故が起きるのは、社員が個人のアカウントで業務情報を入力する場面です。CopilotにもChatGPTにも個人向けの入口があり、そこには会社の契約も管理者の統制も及びません。製品を選ぶ議論より先に、社内で誰がどのアカウントを使っているかを確かめてください。
本当の分かれ目は、社内データへの繋がり方
Copilotは、Microsoft 365の中にある業務データへ標準の経路で繋がります。ChatGPTは、渡した範囲を扱います。
Copilot側の繋がり方
有償ライセンスがある利用者は、Work IQとセマンティック検索を通じて、メール・ファイル・チャット・会議・人・プロジェクトといった業務データを参照できます。職場アカウントでサインインすると画面にWork IQの切り替えが出て、業務データを根拠にするか、Webと添付だけにするかを選べます。表示されるのは、そのアカウントがもともとアクセスできる範囲だけで、権限は広がりません。参照したファイルに秘密度ラベルが付いていれば、そのラベルも表示されます。
追加ライセンスがない場合も、指定したファイル、対応アプリで開いている内容、Outlook内の限定的なデータ、設定済みのエージェントという経路で社内データを扱えます。ただしこれは、組織のデータ全体を標準で検索する機能ではありません。横断して探させたいなら有償ライセンスが要ります。
ChatGPT側の繋がり方
こちらも社内データに繋がります。ファイルのアップロード、コネクタの設定、APIでの呼び出し。SharePointに接続するアプリも用意されており、権限を保ったまま検索できます。Microsoft 365の中にも外にも繋げられる代わりに、どこに繋ぐかを自分で決めて設定するという手間がかかります。
どちらもMicrosoft 365の中にも外にも繋がります。分かれるのは標準で連携している範囲、設定にかかる手間、管理のしかた、そして費用です。Microsoft 365に情報が集まっていて追加の設定を増やしたくないならCopilot、繋ぎ先を自分で選んで組み立てたいならChatGPT側。社内の情報がどこにあり、誰が設定を維持するのかで決まります。

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業務で選ぶ4つの判断基準
| 基準 | Copilotが向く | ChatGPT側が向く |
|---|---|---|
| 1. 情報の置き場所 | 資料・メール・議事録がMicrosoft 365に集まっている | 情報が複数のサービスに散っている。繋ぎ先を自分で選んで組み立てたい |
| 2. 作業の場所 | Word・Excel・PowerPoint・Outlook・Teamsの中で完結させたい | ブラウザやアプリ上で、文章・企画・分析をまとめて進めたい |
| 3. 使う人 | 普段からOfficeを使う一般の社員。新しい画面を覚えなくていい | 試行錯誤しながら使える人。プロンプトを工夫する余地が大きい |
| 4. 作りたいもの | 日常業務の時短。既存の文書とメールを起点にした作業 | 自社専用の仕組み。業務システムに組み込むAI機能 |
3番目は見落とされがちですが、定着に直結します。Copilotの強みは、新しい画面を開かなくていいことです。普段Wordで文書を書いている人は、Wordの中で使えます。一方、別のツールを開いて使うことに抵抗がない人にとっては、大きな差になりません。
価格で比べる前に確かめること
費用の比較から入ると、判断を誤ります。Copilotには要件があり、たとえばメールボックスがExchange Onlineに無いと中核の機能が働きません。オンプレミスやハイブリッド構成のままでは、買っても効果が出ません。まず要件を満たしているかを確認し、そのうえで金額を比べてください。プランと費用は改定されるため、各社の公式ページで確認をお願いします。
両方を使う会社が決める3つのこと
実際には、片方に統一している会社のほうが少数です。部署によって使うものが違い、個人が勝手に増やしている状態から始まります。両方あることを前提に、次の3つを決めてください。
1. 会社が認めるアカウントを決める
製品の選定より優先度が高い作業です。どのアカウントで使ってよいかを明文化し、個人アカウントでの業務利用を禁止します。禁止するだけでは使われ続けるので、認めたアカウントを配るところまでをセットにしてください。使えるものが無い状態で禁止だけすると、見えないところで使われます。
2. 入れてよい情報の線を引く
法人向けプランなら学習には使われませんが、それと「何を入れてよいか」は別の話です。顧客の個人情報、未公開の財務数値、他社との秘密保持契約に関わる内容。自社の規程として線を引いてください。製品の安全性とは別の話です。この線は、CopilotでもChatGPTでも同じものを使えます。
3. 使い分けを1行で言えるようにする
現場に届く形は1行です。比較表は届きません。「Microsoft 365の中の資料を使うならCopilot、それ以外の調べ物や下書きはこちら」。この程度に単純化しておかないと、毎回迷って結局どちらも使われません。判断に迷う場面が出てきたら、そのつど1行を足していきます。
- 「学習に使われるか」だけで選ぶ:法人向けプランなら両社とも使いません。差が付きません
- 製品を決める前に個人アカウントを放置する:いちばん保護が弱い経路が残ります
- 要件を確認せずに費用を比べる:Copilotは要件を満たさないと中核が働きません
- 比較表を配って終わり:現場に届くのは1行のルールです
自社システムと繋いだAIを作る方向なら、AI内製化の進め方や社内GPTの導入事例で、作り方と判断の材料を扱っています。
活用イメージ|研修の2ケース
ケースA:Copilot Coworkの導入支援と活用研修
部署ごとの実データを教材にして、指示文のテンプレートと運用ルールを研修のなかで整備しました。使い分けのルールも、実際の業務に当てはめて決めるほうが守られます。
ケースB:中小製造業でのCopilot研修
PC操作に慣れていないメンバーが多い現場では、使うものを1つに絞るほど定着します。日報や集計表のように毎日触るファイルから入り、範囲を広げるのは最初の業務が定着してからにしています。
よくある質問
まとめ|情報がどこにあるかで決まる
「学習に使われるか」で比べても差は付きません。Microsoftは基盤モデルの学習に使わないと明記し、OpenAIも既定では使わないとしています。契約上の保護も両社にあります。この軸で選定を進めると、判断の材料が揃わないまま金額の話になります。
この4つを自社の状況に当てはめると、どちらが手間の少ない選択かが見えます。次から順に見ていきます。
選ぶときの基準は4つ。情報の置き場所、作業の場所、使う人、作りたいもの。3番目は定着に直結します。新しい画面を開かなくていいことは、普段Officeで仕事をしている人には大きな利点です。
そして製品より先に決めることがあります。会社が認めるアカウント、入れてよい情報の線、使い分けの1行。個人アカウントでの業務利用が残っている限り、どちらを選んでも保護は届きません。
登壇・セミナー実績


神戸商工会議所・石川県庁など、各地の商工会議所や自治体でAI活用セミナーに登壇しています。現場で得た知見をもとに、京都の中小企業のAI導入を支援しています。
監修
仙入 功樹 せんにゅう こうき
代表取締役
吉村 祐樹 よしむら ゆうき
COO
本記事はAI導入支援の実務担当が監修しています。京都の中小企業を中心に、AI導入の相談から開発・研修・運用定着までを支援しています。監修者の経歴と登壇実績はメンバー紹介をご覧ください。
ご相談と資料
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