問い合わせ対応にAIを使う前に|メリット・デメリットと依頼先の選び方

問い合わせ×AI 答えさせる問いと、人が受ける問い

御社では、在庫や納期、製品の仕様について同じような問い合わせに、毎日担当者が答えていませんか。社内でも、就業規則や経費の手順を総務に聞きに来る人が多いかと思います。こうした一次対応の一部は、AIに任せられる可能性があります。任せる前に、過去の問い合わせを種類ごとに分け、AIに答えさせる質問と人に回す質問の表を自社で作ってから、依頼先に渡してください。価格、納期の約束、契約の条件、苦情は、AIに答えさせず担当者が受けてください。弊社がカタログに参考価格と在庫数を書き足し、答えない決まりを書かずにAIに読ませたところ、価格や在庫を聞く10件すべての回答に、書き写した時点の古い数字が入りました。日付の注記つきでした。AIが誤って案内した内容も、取引先に説明するのは御社です。

「問い合わせにAIを使えないか」と社内で言われたものの、どこまで任せてよいのか決めきれない。そんな経営層の方と、上司に説明する営業事務・総務・情報システムの担当者の方に向けて、自治体の実証と弊社の検証の数字、リスク、依頼先に確認してほしい5つの点をまとめました。

この記事でわかること
  • 問い合わせのうち、どれをAIに答えさせ、どれを人が受けるか
  • 弊社が架空のカタログで試した、価格表や在庫数を読ませたときのAIの答え方
  • 問い合わせ対応のAIのメリット・リスクと、導入前に必要な対策の一覧
  • 依頼先に確認する5つの点と、商談でそのまま使える質問
  • 在庫や納期の数字を、AIにどう渡せばよいか
  • 社内の問い合わせ(総務・人事)から始めるときの分け方
執筆について:本記事は、京都市左京区(百万遍)に拠点を置く株式会社ノーコードソリューションズが、社内文書を根拠に答えるチャットボットや業務システムとAIの開発を、要件定義から運用まで担ってきた実務に基づいて執筆しています。統計・法令・ガイドラインは、2026年10月8日時点で公的機関と調査会社の公表資料を確認したうえで引用しています。

監修

仙入 功樹せんにゅう こうき

代表取締役

吉村 祐樹よしむら ゆうき

COO

本記事は、AI導入の相談から開発・研修・運用定着までを支援している実務担当が監修しました。監修者の経歴と登壇実績はメンバー紹介に載せています。

導入事例集|PDF・全16ページ

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目次

問い合わせのうち、AIに答えさせてよいのはどれか

問い合わせ対応へのAI活用とは、取引先や顧客、社員から届く質問に対し、AIが製品カタログや社内規程、過去の対応記録を探して、根拠の文書を添えた回答や回答案を出す取り組みのことです。文書を探して答えの根拠にする仕組みは、RAG(検索拡張生成)と呼ばれます。たとえば「交通費の精算はいつまでか」と聞かれたら、AIは経費規程から該当する条文を探し、その条文を示して答えます。

AIに答えさせやすいのは、根拠の文書がはっきりしていて、誰が聞いても答えが同じ質問です。答えが取引先との約束になる質問や、個別の事情を判断する質問は、人が受けてください。

  • AIに任せやすい対応
  • 人が受ける対応
  1. 製品の仕様型番から仕様や後継品を答えるカタログに無い型番、特注の可否
  2. 在庫・納期基幹システムの数字を引いて回答案を作る納期の約束、分納や欠品の対応
  3. 価格・条件答えさせない見積、値引き、支払の条件
  4. 社内の規程規程の該当箇所を根拠つきで示す個別の事情に合わせた例外の判断
  5. 苦情・事故受付と記録の下書き対応のすべて

この表は、御社の問い合わせに合わせて作り直すための見本です。過去の問い合わせを並べてみると、AIに答えさせられる質問と、人が受けるべき質問の割合が見えてきます。

窓口によっても向く使い方が違います。Webサイトのチャットは型番や仕様の質問に、メールはAIが返信の下書きを作って担当者が確かめて送る使い方に向いています。たとえば納期の問い合わせメールなら、AIが基幹システムから該当する注文と納期を引いて返信の下書きを作り、担当者は数字と言い回しを確かめて送ります。電話は自治体の実証のような定型の受付が中心で、取引先からの込み入った相談には向きません。社内の問い合わせなら、社員が普段使う社内チャットから聞ける形にしておくと、使われるかどうかの差を小さくできます。

自治体の実証では、どのくらいの問い合わせをAIが受けられたか

問い合わせ対応のAIで効果を数字で示した実証は、自治体の電話の自動応答に多く、対象は住所の異動や証明書、住民税のような定型的な問い合わせです。福島市の市民課の実証では、対象にした定型の問い合わせの60%が職員に引き継がずにAIだけで終わり、利用者の満足度は82%でした。神戸市では、住民税の定型的な問い合わせの50%以上に、音声の自動応答がFAQから答えられました。企業がチャットで問い合わせを受けたときの効果を示した国内の公的な数字は、見当たりませんでした。

指標数字条件出典
電話のAIだけで問い合わせが完了した割合/利用者の満足度60%/82%福島市市民課の定型的な問い合わせ(住所異動、証明書の発行など)。2026年1月28日〜2月25日実証を行った事業者の事例ページ(福島市と連携した実証)
住民税の定型的な問い合わせに自動で回答できた割合50%以上神戸市の音声の自動応答。FAQから答えを選ぶ方式で、電話の途中で切れたものは母数から除く総務省 自治体におけるAI活用・導入ガイドブック〈導入手順編〉第4版(令和7年12月)
電話相談の件数の減少約15%守口市。AIの電話相談と、ごみ分別のチャットボットを並行して稼働同上

自治体の数字は、電話で受ける定型的な問い合わせのものです。取引先からの製品や納期の問い合わせで同じ割合になるとは限りません。

問い合わせ対応にAIを使うメリットは、担当者の仕事のどこに出るか

同じ質問への最初の応対をAIが受け持ち、ベテランに集中していた質問に各自がAIで答えを探せるようになります。

AIが一次対応を受けたときの、問い合わせの流れ

  1. 受け付けるAIが最初の応対をする。営業時間外も受けられる
  2. 根拠を探すカタログや規程から該当箇所を探す
  3. 答えるか渡すか根拠があれば出典を添えて答える。なければ答えない
  4. 担当者へ渡す会話を添えて渡すので、聞き直さずに済む
  5. 資料を直す渡した理由を集計し、足りない資料を足す

資料を直すと、次から同じ質問にAIが答えられる

根拠が見つかっても、その答えが取引条件の約束になる質問は担当者へ渡す。

同じ質問への対応を、AIが先に受けられる

前の章の自治体の実証が対象にしたのは、住民票や住民税のように答えの決まった問い合わせでした。御社でも、型番から仕様を調べる質問や、規程の該当箇所を探す質問が月に何件あるかを数えると、最初の応対をAIに任せられる範囲が見えてきます。

型番から仕様を答え、カタログに無い型番は担当者に渡すチャットボットは、無料デモで触れます(登録不要)

ベテランに集中していた質問に、各自がAIで答えを探せる

弊社が開発した建設業向けのチャットボットでは、法規制や過去の事例についての照会が一部のベテランに集中していました。登録した事例と法規制のデータから根拠を探し、出典を付けて答える仕組みにしたことで、経験の浅い担当者でも、判断に使う資料をその場で探せるようになりました。答えに出典が付くので、担当者は元の資料までさかのぼって答えを確かめられます。

営業時間外にも、一次回答ができる

夜間や休日の問い合わせにAIが最初に答え、解決しなかった問い合わせを翌営業日に担当者が引き継ぐ形にすれば、取引先を待たせる時間を短くできます。ただし、電話番号や問い合わせフォームを隠してAIに誘導すると、取引先の不満が増えます。

答えられなかった質問から、資料の足りない部分が分かる

AIが答えられなかった質問を理由ごとに集めると、カタログやマニュアルに書かれていないことが見えてきます。弊社のデモでも、答えずに担当者へ渡した質問を回数の多い順に並べ、渡した理由も添えて一覧にしています。資料を直せば、次から同じ質問にAIが答えられるようになります。

効果は、AIだけで終わった件数に1件の対応時間を掛け、そこから文書の更新と答えの確認にかかる時間を引いて見積もります。この運用の手間を引かないと、効果を大きく見積もることになります。

担当者が問い合わせにかける時間(月600件・1件10分の場合)

  1. 導入前100時間
  2. 3割をAIで完了78時間

担当者の対応 70時間文書の更新と答えの確認 8時間減るのは月22時間

数字はすべて仮の値。自社の件数と時間に置き換えて使う。

問い合わせ対応にAIを使うデメリットは何か。誤った案内をしたらどうなるか

帝国データバンクの調査(2026年5月14日、回答10,312社)でも、生成AIの懸念の1位は「情報の正確性」で、50.4%の会社が挙げました。問い合わせ対応では、誤った案内が取引先や顧客に直接届くことが、いちばん大きなリスクです。導入を決める前に、誤案内が起きたときの対応と、文書の更新を続ける負担も見積もってください。

社内文書を根拠にしても、ハルシネーション(誤った回答)はゼロにならない

米スタンフォード大学の研究者が2024年5月に公表した検証では、文書を検索して答える法律調査用のAIでも、17%から33%の割合で誤りや作り話が含まれました。米国の法律分野で測った数字です。それでも、RAGを使えば誤りがなくなるわけではないことは分かります。古い版の規程やカタログが混ざっていれば、AIは古い答えを返します。

AIが誤って案内したら、導入した会社が責任を問われることがある

カナダ・ブリティッシュコロンビア州の民事紛争解決審判所は2024年2月、航空会社のチャットボットが忌引きの割引運賃を後から申請できると誤って案内した件で、航空会社に差額などの支払いを命じました。航空会社は自社サイトの情報すべてに責任を負うとして、過失による不実表示を認めた判断です(少額の民事紛争の判断で、日本で同じ結論になるとは限りません)。政府機関向けに作られたデジタル庁の生成AIのガイドライン(2026年6月12日)も、対策をすべて行っても「リスクをゼロにすることはできないとの前提」で、リスクが表に出たときの対応を準備するよう求めています。誤った案内が見つかったら、AIを止める手順に加えて、同じ質問をした取引先を会話の記録から探し、正しい内容を連絡する手順も決めておきます。

外から届く文章で、AIが操られることがある

問い合わせの文章やメールに、AIへの指示を紛れ込ませて想定外の動きをさせる攻撃があります(プロンプトインジェクション)。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、AIの利用全般にかかわるリスクとして「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が組織向けの3位に初めて入りました。セキュリティの国際団体OWASPも「OWASP Top 10 for LLM Applications 2025」で、RAGなどの手法ではこの攻撃を防ぎきれないとしています。社外向けのチャットボットには社内文書を読ませず、部署ごとに見られる文書を分けておいてください。

問い合わせに含まれる個人情報の扱い

問い合わせには、取引先担当者の名前や連絡先、社員の事情が含まれます。個人情報を生成AIサービスに入力することについては、個人情報保護委員会が2023年6月に注意を呼びかけています。外部のAIサービスを使うなら、入力が学習など応答以外に使われないか、会話の記録がどのくらいの期間、どこの国で保存されるかを、契約と設定で確かめてください。

文書の更新が止まると、古い答えを返し続ける

規程を改定したときや製品の生産が終わったときに、誰がいつAIの読む文書を差し替えるかを決めておかないと、AIは古い内容を案内し続けます。文書の更新と答えの確認にかかる手間は、毎月の運用費に含めて見積もってください。稼働の前に、AIの答えを直せる人、毎月の指標を見て直す範囲を決める人、依頼先との窓口になる人を決めておきます。1人が兼ねても構いませんが、空席は作らないようにします。

誤った案内に気づいてから、再開するまで

  1. 気づく取引先の指摘や、毎月の確認で見つかる担当者
  2. AIを止める同じ種類の質問に答えないようにする情報システム・依頼先
  3. 訂正を連絡する同じ質問をした取引先を記録から探す担当者
  4. 文書を直す古い版や誤りのある文書を差し替える文書の持ち主
  5. 測り直す同じ質問集で、誤りが消えたかを確かめる依頼先
  6. 再開する受け入れの基準を満たしてから戻す決める人
止める手順と連絡の手順は、稼働の前に依頼先と決めておく。担当の分け方は一例。
観点起こりうる問題導入前に決めること
一次対応根拠があっても誤りはゼロにならない答えに出典を付け、根拠が足りなければ答えずに人へ渡す
文書の更新古い文書が混ざると古い答えを返すどれが最新の版かと、更新の担当を決める
時間外誤案内に気づくのが翌営業日になる約束になる質問は答えさせず、翌営業日に担当者へ渡す
責任AIの誤った案内も、取引先から見れば導入した会社の案内になる価格・納期の約束・契約・苦情は人が受ける
セキュリティ外から届く文章でAIが操られる社外向けに社内文書を読ませない。部署ごとに見られる範囲を分ける
情報個人情報の学習利用・保存・海外での処理学習・保存期間・処理する国を契約と設定で確かめる

依頼先に渡す前に、問い合わせの何を数えておくか

依頼先に相談する前に、社内で次の4つをそろえておくと、話が具体的になり、見積もりの前提もそろいます。担当者の方が上司に報告するときの材料にもなります。

1

過去1〜3か月の問い合わせを、種類ごとに数える

メール、電話のメモ、社内チャットから問い合わせを集め、社外と社内に分けたうえで、種類ごとの件数と1件にかかる時間を数えます。件数が多く、答えの決まった種類が、最初にAIを試す候補です。

2

AIに答えさせる質問と、人に回す質問の表を作る

上の表を見本に、過去の問い合わせを振り分けます。判断に迷った質問は人が受ける欄に置き、依頼先との打ち合わせで扱いを決めてください。この表が、依頼先に渡すいちばん大事な資料になります。

3

答えの根拠になる文書と、その持ち主・更新日を一覧にする

カタログ、規程、マニュアルについて、どれが最新の版か、誰が更新しているかを書き出します。古い版が混ざっていないかも、ここで確かめます。

4

依頼先2〜3社に、同じ質問集で試してもらう

1で集めた実際の質問に、AIが答えるべきでない質問も混ぜて渡します。答えた割合だけでなく、答えるべきでない質問を答えずに人へ渡せたかで比べてください。

ここまでのまとめ|上司への報告にそのまま使えます

  • AIに任せやすい製品の仕様や規程の該当箇所を根拠つきで答える、在庫や納期の回答案を作る、答えられなかった質問を集める
  • 人が受ける価格や値引き、納期の約束、契約の条件、苦情や事故、例外の判断
  • 自動で完了した例自治体の電話の実証で60%(福島市・約1か月・住民票などの答えの決まった問い合わせ)。取引先からの問い合わせでの割合は、自社の件数の集計と試行で測る
  • 始める前にそろえる種類ごとの件数、答えさせる質問と人に回す質問の表、根拠の文書の一覧、同じ質問集での試行

在庫や納期の数字は、AIにどう渡せばよいか

在庫数や納期のように毎日変わる数字は、AIに文書として読ませず、販売管理や在庫のシステムから問い合わせのたびに引く形にします。文書に書き写して読ませると、書き写した時点の古い数字を答えてしまいます。弊社の検証でも、そうなりました。

弊社は2026年10月に、架空の製品カタログで試しました。AIは商用の生成AI(Claude Sonnet 5.5)です。まず、価格も在庫も載せないカタログで試しました。「カタログを根拠に答える」指示と、担当者に回す選択肢だけを用意した条件でも、価格や納期の約束などの答えるべきでない質問20件は、すべてAIが自分から担当者に回しました。ここまでは期待どおりです。次に、カタログに参考価格(2025年4月改定)と9月1日時点の在庫数を書き足しました。価格・在庫・納期・値引きを聞く10件すべての回答に、書き写した古い数字が入りました。4件は担当者に回さず、そのまま答えています。残る6件は担当者に回していますが、その回答文にも古い価格や在庫数を書いていました。日付の注記はどれにも付いていましたが、注記があっても、取引先はその数字を見て手配を考えます。質問と一緒にAIへ渡す指示文に「価格や在庫の約束は答えずに担当者へ渡す」という決まりを書き足すと、10件すべてを担当者に回し、数字を出した回答は0件になりました。

ただし、指示文の決まりは毎回守られるとは限りません。同じ質問でも答えが揺れることがあり、言い換えや、問い合わせに紛れ込ませた指示で外れることもあります。価格や在庫の数字は、そもそもAIが読む文書に載せないでください。そのうえで、回答に金額や在庫数のような数字が入っていたら送る前に止める確認を、仕組みとして入れておきます。

弊社の検証:AIは答えるべきでない質問を止められたか

  • 正しく担当者に回した(数字なし)
  • 古い数字を書いたうえで担当者に回した
  • 古い数字のまま答えた

価格も在庫も載せていないカタログ:答えるべきでない質問(各20件)

決まりあり・なしどちらの条件も同じ結果
20件すべて担当者へ

参考価格と在庫数を書き足したカタログ:価格・在庫・納期・値引きの質問(各10件)

決まりなし
10件すべてに古い数字(×4件はそのまま回答、△6件は担当者へ)
決まりあり
10件すべて担当者へ・数字は0件
弊社の検証(架空のカタログ・Claude Sonnet 5.5・2026年10月)。古い数字を入れた回答には、どれも「9月1日時点」などの注記が付いていた。
検証の条件を詳しく見る

架空の製品15点(コンベア、電磁弁、センサー、モーター)のカタログを作り、質問60件を用意しました。40件はカタログで答えられる仕様の質問、20件は価格・値引き・納期の約束・カタログにない型番・苦情・個人情報・契約条件など、答えるべきでない質問です。答えてよい40件は、決まりの有無にかかわらず内容が正しく、答えるべきでない20件はどちらの条件でもすべて担当者に回しました。決まりのない条件では、答えてよい質問のうち1件(生産終了品の後継品の有無)も、正しい内容を添えたうえで担当者に回しています。

そのうえで、カタログに参考価格と在庫数を書き足した版で、価格・在庫・納期・値引きを聞く10件を試しています。各質問に1回ずつ、独立した会話で答えさせました。答えてよい質問は正解の語が含まれるかをプログラムで照合し、外れた2件(表記の揺れ)と、古い数字の有無・担当者に回したかは、回答を1件ずつ目で確かめて数えています。AIは2026年10月時点のClaude Sonnet 5.5で、件数の少ない架空データでの検証です。

問い合わせの振り分け方

問1 価格、納期の約束、契約の条件、苦情、個人情報に関わる質問か

はい → 担当者へそのまま回すAIは受付と記録の下書きまで
いいえ → 問2へ

問2 答えの根拠が、最新の文書か基幹システムの数字にあるか

文書にある → AIが答える根拠にした文書を添えて答える
基幹の数字にある → 回答案在庫・納期はAIが回答案を作り、担当者が確かめて送る
ない → 担当者へ渡す答えずに、会話を添えて渡す
答えずに渡した質問は理由ごとに集め、資料を直す材料にする。

AIが答えずに担当者へ渡すこと(有人対応への切り替え。エスカレーションとも呼ばれます)は、根拠が見つからないとき以外にも起こす条件を決めておきます。利用者が「解決しない」を押したとき、同じ質問を言い換えて2回以上聞かれたとき、「至急」「返金」のように苦情につながる言葉が出たときです。渡すときは会話をそのまま添え、取引先に同じ説明を二度させないようにします。

基幹システムに用意しておきたいのは、品目マスター(商品を登録した一覧表)に旧型番と後継品の対応を持てること、在庫と納期をAPIやCSVで外から読めること、取引先ごとにどの数字を見せてよいかを分けられることの3つです。在庫は帳簿上の数ではなく、ほかの注文に引き当てた分を除いた出荷できる数を返すようにし、回答案には数字を引いた時刻を添えます。誰がどの数字を見てよいかは、AIへの指示ではなく基幹システムとのつなぎ込みで絞り、ログインした取引先の注文しか返さない作りにします。在庫の問い合わせへの回答案づくりは、販売管理にAIを使う前に確認したいことでも触れています。

問い合わせ対応のチャットボットを作る手順はAIチャットボット導入の6ステップで、社内文書を根拠に答える仕組みの精度の上げ方は社内AI・RAG構築の7つの実装ポイントでまとめています。

社内の問い合わせ(総務・人事)は、どこからAIに任せるか

就業規則や経費精算、休暇の取り方のような社内の問い合わせは、取引先との約束にならないぶん、AIを試し始めやすい対象です。答えの根拠は規程やマニュアルにあり、同じ質問が繰り返し届きます。一方で、社員なら誰でも見てよい文書と、一部の人しか見られない文書が混ざっている点は、社外向けより気をつけます。

社内の問い合わせの分け方(見本)

  • AIに任せやすい対応
  • 人が受ける対応
  1. 就業規則・休暇規程の該当する条文を示して答える個別の事情に合わせた例外の判断
  2. 経費精算期限や必要な書類を、規程から答える規程に当てはまらない支出の承認
  3. ITの申請申請の手順と窓口を、マニュアルから答える権限の付与や、アカウントの操作
  4. 書類・手続き様式の置き場所と書き方を案内する提出された書類の確認
  5. 給与・人事評価最初は答えさせない対応のすべて
見本なので、自社の問い合わせの件数と規程に合わせて作り直す。

規程を改定したら、AIが読む場所の文書を新しい版に差し替え、改定の履歴はAIが探さない別の場所に保管します。給与や人事評価のように一部の人しか見られない文書は、最初は読ませず、部署ごとに見せてよい文書を分けてから広げます。

正しく答えても、使われなければ問い合わせは減らない

社内向けのチャットボットでは、答えの精度に加えて、質問するまでの手間が使われるかどうかを左右します。専用のページを開く手間があると、総務に直接聞く人が減らないことがあります。社員が普段使う社内チャット(TeamsやSlackなど)から聞ける形にして、まず1〜2部署で日常的に使われるかを確かめると、広げるかどうかを判断できます。

作る前に、チャットボットが本当に要るかを確かめる手もあります。弊社が研修を担当した建材メーカーでは、最初のご相談は社内の問い合わせに答えるチャットボットでしたが、先に社員の方が自分の業務でAIを試す研修を行いました。試したあとなら、チャットボットが要るかを自社で判断できます。

チャットボットの開発は、どこに頼めばよいか

依頼先を比べるときは、AIの技術力より先に、次の5点を確かめてください。

1

答えさせる質問と人に回す質問を、実際の問い合わせから一緒に決めるか

御社の問い合わせを種類ごとに見たうえで、AIに答えさせる範囲を提案してくれるかを見ます。最初の提案が「全部AIで24時間対応できます」だったら、少し立ち止まってください。答えるべきでない質問を考えないまま話している可能性があります。

2

答えられないときは答えず、会話を添えて人に渡す設計か

商談では、根拠のない質問をその場で入力してもらい、担当者へ引き継がれる画面を見せてもらってください。担当者に、質問の内容とそれまでの会話が届くかを見ます。担当者が最初から聞き直さずに済む渡し方なら、取引先を待たせる時間も短くなります。

3

御社の質問集で精度を測り、受け入れの基準を数字で決めるか

検証では、答えてよい質問に正しく答えた割合、誤った回答、答えるべきでない質問への回答、担当者への引き継ぎ、正しい出典の提示を測ります。何でも担当者に回す作りでも誤りは減るので、正しく答えた割合と一緒に見てください。同じ質問を何回か流して答えが揺れないか、AIへの指示を紛れ込ませた質問を混ぜても社内の情報を出さないかも確かめます。それぞれ、どの数字を満たせば使い始めるかを稼働前に依頼先と決めてください。

4

見せてよい文書の範囲と、外からの指示への対策を設計に含めているか

社外向けと社内向けで読ませる文書を分けているか、部署ごとに見られる範囲を変えられるか、会話の記録をどこにどのくらいの期間残すかを確かめます。問い合わせの文章に紛れた指示で、AIが社内の情報を出さない作りになっているかも聞いてください。文書を探す段階で、質問した人の権限に合う文書だけに絞る作りかどうかも、あわせて確かめます。

5

文書の更新と精度の測り直しを、稼働後の体制と契約に入れているか

文書を差し替えたとき、AIのモデルが更新されたときに精度を測り直す体制があるかを確かめます。誤った回答が見つかったときの連絡と、AIを止める手順も、契約の前に決めておいてください。経済産業省の「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(2025年2月18日)は、AIの開発や利用で生じる利益とリスクを当事者の間で適切に分けるために、契約のときに確かめる点をまとめています。

商談では、次の質問をそのまま使えます。

確認点依頼先に聞く質問安心できる答えの例
1 答えさせる範囲当社の問い合わせのうち、どれをAIに答えさせるべきだと考えますか種類ごとの件数を見たうえで、答えさせない質問も挙げて提案する
2 答えないとき根拠が見つからない質問には、AIはどう振る舞いますか答えずに、会話を添えて担当者へ渡す流れを画面で示す
3 精度の測り方当社の過去の質問で精度を測れますか検証に使う質問の数と、受け入れの基準を先に決める
4 見せる範囲社外向けのAIに、社内の文書を読ませない作りにできますか文書ごと・部署ごとに見られる範囲を分ける方法を説明する
5 稼働後文書を改定したとき、誰がAIに反映し、精度を確かめますか更新の手順と費用の扱い、誤回答が出たときに止める手順を示す

稼働したあとは、次の数字を毎月見ます。導入前の件数と対応時間は、比べる基準として残しておいてください。

毎月見る数字数え方悪くなったら見るところ
自己解決率利用者が「解決した」を押した件数÷AIを使った件数。3営業日以内に同じ相手から再度の問い合わせがなかった件数も並べて見る「解決した」を押さずに閉じた会話がどれだけあるか。答えられなかった質問の理由と、足りない資料
担当者への切り替え率担当者に渡した件数÷AIを使った件数渡す条件が広すぎないか、文書が古くないか
答えられなかった質問渡した理由ごとの件数件数の多い理由から資料を直す
担当者の対応時間担当者が受けた件数×1件の対応時間自己解決率が上がっても減らないなら、AIを使う人が増えただけの可能性

依頼先の種類ごとに、向いている場面は違う

頼める先を、この記事では便宜上5つに分けました。どれが優れているかは、御社の状況によって変わります。弊社は最後の、業務システムとAIを両方開発する会社にあたります。

依頼先の種類向いている場面確認しておきたい点
チャットボットの製品(クラウドサービス)FAQの文書が整っていて、標準の機能で足りる基幹システムの数字を引けるか。会話の記録の保存場所と期間
コールセンター・業務委託の会社電話とチャットの一次対応をまとめて任せたい人に渡したあとの対応の質。自社の文書を誰が更新するか
大手のシステム会社全社の問い合わせ窓口をまとめて作り直すAIの部分の担当者と再委託先。検証の段階を契約で区切れるか
社内のIT部門・IT子会社社内規程の問い合わせから小さく始めたい文書の更新と精度の測り直しに割ける人員
業務システムとAIを両方開発する会社在庫や納期の数字を基幹システムから引いて答えたい独自に作った部分は保守が続く。担当者が抜けたときの代替体制と、再委託の有無

AI開発を内製するか外注するかの分かれ目はAI開発の外注と内製の分岐点で整理しています。

弊社は、問い合わせ対応のAIをどう進めているか

弊社の進め方は会社ごとに変えますが、建設業向けのチャットボットの開発と、研修の支援では、次のように進めました。

  1. 答えには、根拠にした文書を添えます建設業向けのチャットボットでも、答えに出典を付ける形にしました。開発の期間は約3か月でした。根拠:建設業向けチャットボットの開発事例
  2. AIに読ませてよい文書と、読ませない文書を先に分けます建材メーカーでの研修では、普段扱っている書類のうちAIに読ませてはいけないものを事前のヒアリングで確かめ、データの線引きを自社のルール案にするコマを設けました。根拠:建材メーカーでの研修事例
  3. 精度は、直す前と直した後を測って比べます製造業の団体での研修では、整えていない文書のままRAGを組んで精度が出ないことを体験し、文書の整え方や分け方を段階的に変えて、改善の前後を数字で比べました。研修での取り組みです。根拠:製造業の団体でのRAG研修事例

問い合わせのAIで、法律上気をつけることは何か

AIのために新しく覚える法律は、ほとんどありません。AI推進法(2025年9月全面施行)に罰則はなく、国の「AI事業者ガイドライン」にも法的な拘束力はありません。AIを使っても、今までの法令はそのまま当てはまります。

法令ごとの注意点を詳しく見る
法令・指針問い合わせのAIで気をつける点
個人情報保護法問い合わせの氏名や連絡先をAIに渡すときは、利用目的の範囲内かを確かめる。外部のAIサービスに処理を任せるなら委託先としての監督、提供事業者やサーバーが海外にあるなら、外国にある第三者への提供の扱いと、その国の制度の把握も確認する
景品表示法・消費者契約法消費者からの問い合わせに、AIが実際より有利な価格や条件を答えると、有利誤認表示として問題になるおそれがある。「AIの回答に責任を負わない」と書いても、消費者との関係で責任をすべて免れることはできない
著作権法他社のカタログや規格書を取り込んで答えさせ、その内容を大きく出力する使い方は、許諾が要ることがある(文化庁「AIと著作権に関する考え方について」2024年3月15日)。自社の規程やマニュアルを読ませる使い方なら問題になることは少ないが、他社の取扱説明書や規格の本文、外注で作って著作権を譲り受けていない資料が混ざっていないかは確かめる
AI事業者ガイドライン法的な拘束力はないが、AIを使う会社が出力の精度とリスクを理解して使うこと、個人情報を不適切に入力しないことを求めている

内容は2026年10月8日時点の公表資料をもとにしています。社外向けのチャットボットの案内が取引条件の約束とみなされるか、海外のAIサービスに個人データを渡してよいかは、会社ごとに答えが変わります。弁護士などの専門家に確認してください。

問い合わせ対応のまわりで、弊社が手がけた開発と研修

「実際にはどんなものを作るのか」をイメージしていただけるよう、問い合わせ対応に近い3件を紹介します。

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読むより、触ったほうが早いかもしれません

型番から仕様を答えるチャットボットと、社内文書を根拠に答える検索を、架空のデータで実際に動かせます。答えられない質問をどう扱っているかを見てみてください。

デモ一覧を見る在庫の数字をどこから引くかは在庫と棚卸のデモで見られます

よくある質問

Q.問い合わせをすべてAIに任せて、担当者をゼロにできますか。
A.担当者は要ります。AIが答えずに渡した問い合わせを受けるほか、AIの答えの確認と、AIが読む文書の更新も人が担います。自治体の電話の実証でも、AIが受けられたのは住所の異動や証明書、住民税のような答えの決まった問い合わせでした。
Q.AIが誤った回答をしたら、誰の責任になりますか。
A.取引先や顧客から見れば、導入した会社の回答です。依頼先やAIの提供元にどこまで求められるかは、契約で決めておきます。答えに根拠の文書を添え、約束になる問い合わせは人が受ける設計にしてください。
Q.社内規程やマニュアルを読み込ませるとき、気をつけることは何ですか。
A.改定前の版が混ざると、古い答えを返します。最新の版をどこに置くかと、改定したときに誰が差し替えるかを先に決めてください。見せてよい範囲の分け方は、社内の問い合わせの章で説明しています。
Q.生成AIのサービスを、そのまま問い合わせ窓口に使えませんか。
A.汎用の生成AIは、御社のカタログや規程を知らないうえ、答えてはいけない質問の線引きもありません。根拠にする文書を限り、答えずに担当者へ渡す条件を決めてから使ってください。
Q.担当者が1〜2人の会社でも運用できますか。
A.件数の多い種類を1つに絞って始めれば運用できます。そのかわり、文書の更新と毎月の数字の確認を、誰がいつやるかは最初に決めてください。
Q.費用はどのくらいかかりますか。
A.対象の問い合わせの種類、つなぐシステム、検証の規模によって変わるため、個別見積もりでご案内しています。見積もりを比べるときは、開発費と、稼働後の文書の更新や精度の測り直しにかかる運用費を分けて確認してください。

まとめ|問い合わせのAIは、答えさせる範囲を決めてから発注する

依頼先の試行は、答えた割合だけでなく、答えるべきでない質問を、答えずに担当者へ渡せたかで比べてください。誤った案内が1件でも取引先に届けば、それは御社の案内になります。

在庫や納期の数字は基幹システムから引き、規程やカタログはどれが最新の版かと更新の担当を決めておくと、古い答えを返すのを防げます。個人情報と社外向けの案内の扱いは、弁護士などの専門家とあわせて確認してください。

弊社は京都市左京区(百万遍)を拠点に、社内文書を根拠に答えるチャットボットと、在庫や納期の数字を持つ業務システムの両方を開発し、問い合わせの棚卸しから運用まで担っています。どの問い合わせから任せるか決まっていない段階からご相談いただけます。

登壇・セミナー実績

神戸商工会議所でAI活用セミナーに登壇する様子
神戸商工会議所 AI活用セミナー
開催レポートを読む →
石川県庁主催のAI活用セミナーの様子(満席の会場)
石川県庁主催 AI活用セミナー
開催レポートを読む →

神戸商工会議所・石川県庁など、各地の商工会議所や自治体でAI活用セミナーに登壇しています。

ご相談と資料

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自社の業務に当てはめたい方へ

どの業務から手を付けるか、何を作るかが決まっていなくても構いません。30分の無料相談で、今の状況から伺います。

ご相談はオンラインでも、京都・百万遍のオフィスでもお受けします。秘密保持契約を先に結ぶこともできます。

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