システム開発のスケジュールはどう決まるか|日程確認5点

見積書に「開発期間:約3か月」と書かれていても、その3か月に何が含まれているのか、途中で仕様の調整が入ったらどうなるのかまでは分からない、という相談をよく受けます。他の業務の計画やシステムの切り替えタイミングを決めるうえで、日程は金額と同じくらい重要な判断材料なのに、見積書では金額ほど細かく説明されないことが多いためです。システム開発の日程は、単一の作業期間ではなく、性質の異なる複数の工程の合計で決まります。この記事では、日程がどの工程の積み上げで組まれているかと、発注側が着手前に確認しておくと後工程でのずれを防ぎやすい5つの点を、業務システム開発の実務から整理しました。読み終えたときに、提示された日程のどこを質問すればよいかが分かる状態を目指しています。

この記事でわかること

  • システム開発の日程が、要件定義の終わり方に最も左右される理由
  • 見積書の「開発期間」を組み立てている4つの工程の内訳
  • 発注側が着手前に確認しておく5つの点(完了の基準・確定のタイミングなど)
  • 日程が後から押しやすい3つの要因と、その予兆の見つけ方
  • 日程の前提をすり合わせて進めた開発事例

執筆について:本記事は、京都市左京区(百万遍)に拠点を置く株式会社ノーコードソリューションズが、中小企業から上場企業まで、業務システム開発の要件定義から見積もり提示、実装、運用引き継ぎまでを担ってきた実務に基づいて執筆しています。生産管理、受注書処理、与信管理など、複数業種・複数業務領域での開発・進行管理の実績があります。

目次

システム開発の日程は、4つの工程の合計で決まる

見積書に書かれた「開発期間:約3か月」という数字は、1つの作業がまとまって3か月続くという意味ではありません。実際には、性質の異なる複数の工程が順番に積み上がって、合計としての日程になっています。工程ごとの所要期間は案件の規模や既存システムとの連携状況で変わりますが、多くの見積書では次の4つの工程に対応する形で日程が組まれています。

工程 日程が左右されやすい要因
要件定義 現状業務の整理にどれだけ時間がかかるか。関係部署が多い案件ほど確認の往復が増える
設計 画面数・帳票数・連携先数。数が多いほど設計の確認項目も増える
実装・結合テスト 既存システムとの連携やデータ移行の有無。連携先が多いほど確認工数が積み上がる
受入テスト・移行 発注側の検証にかけられる人員と時間。現場の繁忙期と重なると日程が押しやすい

日程の中でも特に見積もりの時点で読みにくいのが要件定義です。関係部署の数が多い案件ほど、確認のやり取りに時間がかかり、要件定義そのものの期間が見積もりより延びることがあります。要件定義が長引くと、後続のすべての工程がそのぶん後ろにずれます。見積書に書かれた「約3か月」がどの工程にどれだけ配分されているかを、契約前に確認しておくことが、日程の妥当性を判断する最初の一歩です。発注の手順そのものを一から確認したい場合は業務システム開発の進め方ガイドで、要件定義から契約形態の選び方までの5段階を解説しています。金額の内訳と相場の確かめ方はシステム開発の費用の見積書の読み方で扱っていますので、あわせてご覧ください。

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発注側が日程で確認する5点

見積書の日程をそのまま受け取るのではなく、契約前に次の5点を確認しておくと、着手後に日程がずれたときの原因を早く切り分けられるようになります。

1

「完了」の基準がどこにあるか

開発期間の終わりが、検収完了なのか、本番稼働なのか、稼働後の初期安定稼働の確認まで含むのかは会社によって違います。基準が曖昧なまま契約すると、日程の終わり方について後から見解が割れることがあります。

2

要件が確定するタイミング

見積書の日程が「要件定義書の確定後」を起点にしているのか、契約日を起点にしているのかを確認します。起点が要件確定後であれば、社内の意思決定に時間がかかるほど、全体の完了時期は見積書の数字より後ろにずれます。

3

仕様変更時の日程への影響の扱い

着手後に仕様の追加や変更が発生した場合、日程がどの程度後ろにずれるかを事前に取り決めているかを確認します。取り決めがないまま進めると、変更のたびに日程交渉が発生し、全体の見通しが立てにくくなります。

4

受入テストにかけられる自社側の工数

受入テストは発注側の担当者が主体になって進める工程です。見積書の日程が、発注側にどれだけの稼働を前提にしているかを確認せずに進めると、現場の繁忙期と重なったときにテスト自体が遅れます。

5

進捗の共有方法と頻度

週次・隔週など、どの頻度で進捗が共有されるかを確認します。共有の頻度が低いと、日程の遅れに気づくのが後工程になり、対応の選択肢が狭まった状態で発覚することがあります。

確認しないと起きること

「開発期間:約3か月」という数字だけを見て発注し、着手後に「要件定義が終わってから3か月」だと分かって、想定していた稼働時期に間に合わなかった、という相談があります。5点それぞれを契約前に確認しておくことが、着手後の日程のずれを防ぐいちばん確実な方法です。

確認したときの反応も、日程の見積もり精度を見極める材料になります。「進めながら決めましょう」としか答えられない会社と、5点それぞれについてその場で根拠を説明できる会社とでは、着手後に日程の見直しが発生する確率が変わってきます。特に、完了の基準と要件確定の起点は、契約書や見積書の文言だけでは読み取りにくいことが多いため、口頭での確認だけで済ませず、確認した内容を議事録やメールで残しておくと、着手後の認識違いを防ぎやすくなります。


日程が後から押しやすい3つの要因

5点を確認したうえでも、着手後に日程が後ろにずれることはあります。次の3つの要因は、着手前の段階で予兆に気づきやすいポイントです。

要因1:要件定義の参加者が確定していない

要件定義に必要な部署の担当者が着手時点で決まっていない案件は、確認の往復が増え、要件定義の工程が長引きやすくなります。契約前に、社内の参加者を先に確定させておくと、この要因による遅れを減らせます。

要因2:既存システムとの連携先が着手後に増える

見積もり時点では想定していなかった既存システムとの連携が、着手後に判明することがあります。連携先の洗い出しを要件定義の早い段階で終えておくと、実装工程での日程の見直しを避けやすくなります。

要因3:受入テストの担当者の稼働が確保できない

受入テストの時期が、発注側の決算期や繁忙期と重なると、担当者の稼働が確保できずテストが後ろ倒しになります。契約時点で受入テストの想定時期を確認し、自社の繁忙期と重ならないかを確かめておくと避けやすくなります。

3つの要因はいずれも、着手前の準備段階で兆候をつかめるものばかりです。要件定義の参加者が決まらない、連携先の洗い出しが終わらない、受入テストの時期が繁忙期と近い、といった状態が契約の時点で見えているなら、それは日程が押しやすい案件だと事前に分かっているのと同じです。日程の遅延を発注側の都合だけで防ぐことはできませんが、着手前に上記の予兆を確認しておくことで、遅延が起きた場合にも原因を早く切り分けやすくなります。開発以外も含めた業務効率化の進め方は業務効率化の進め方ガイドで整理しています。外注先そのものの比較基準は基幹システム開発の外注先の選び方で扱っています。


日程の前提をすり合わせて進めた開発事例

確認の5点と3つの要因が実際の開発でどう活きるかを、事例で見てみます。

生産管理システムのリプレイス(食品製造業)

既存の生産管理システムを刷新する開発を行いました。着手前に受入テストの想定時期を発注側の繁忙期と照らし合わせてすり合わせたことで、稼働開始が現場の繁忙期と重ならないよう進められています。

生産管理システムリプレイスの事例を見る

受注書処理の自動化

受注書のOCR化と管理を行うシステムの開発を行いました。要件定義の参加者を着手時点で確定させたうえで進めたことで、確認の往復による工程の遅れを抑えられています。

受注書処理自動化の事例を見る

このほか、見積書作成の自動化、与信管理・債権回収の効率化など、業務領域の異なる開発実績があります。いずれも着手前に完了の基準と参加者を確定させたうえで進めており、業種や業務が異なっても、日程の前提をそろえるという進め方自体は共通しています。発注前の要件の固め方から相談したい場合はAI受託開発の進め方も参考になります。


よくある質問

Q.見積書の「開発期間:約3か月」は、いつから数えた3か月ですか。
A.契約日からなのか、要件定義書の確定後からなのかは会社によって異なります。起点が要件確定後の場合、社内の意思決定に時間がかかるほど、全体の完了時期は見積書の数字より後ろにずれます。契約前に起点を確認してください。

Q.着手後に仕様変更が発生すると、日程はどれくらいずれますか。
A.変更の内容や規模によって異なるため一律には言えません。契約前に、仕様変更が発生した場合の日程への影響をどう扱うか(都度見積もり直すのか、一定範囲まで契約に含むのか)を確認しておくと、着手後の交渉がスムーズになります。

Q.受入テストにはどれくらい社内の工数を割く必要がありますか。
A.案件の規模によって異なります。契約前に、受入テストで想定している自社側の稼働量と時期を開発会社に確認し、社内の繁忙期と重ならないかを確かめておくことをおすすめします。

Q.日程が遅れそうなとき、どのタイミングで気づけますか。
A.進捗共有の頻度によって変わります。共有が週次・隔週など高い頻度で行われていれば、遅れの兆候に早い段階で気づけます。契約前に進捗共有の方法と頻度を確認しておくと安心です。

Q.社内にシステム開発に詳しい担当者がいなくても日程の妥当性を確認できますか。
A.確認できます。本記事で挙げた4つの工程の内訳と5点の確認事項をそのまま見積書に当てはめれば、詳しい担当者がいなくても日程の根拠を整理できます。判断に迷う場合は、日程の読み解きからご相談いただけます。


まとめ|日程は工程ごとの内訳を読み、5点を契約前に確認する

システム開発の日程は、要件定義・設計・実装・受入テストという性質の異なる工程の合計で決まります。見積書の数字をそのまま受け取るのではなく、完了の基準・要件確定の起点・仕様変更時の扱い・受入テストの工数・進捗共有の頻度という5点を契約前に確認しておくと、着手後に日程がずれた場合にも原因を早く切り分けられます。

当社は京都市左京区(百万遍)を拠点に、中小企業から上場企業までを対象に、要件定義から実装、運用引き継ぎまでを担う業務システム開発を提供しています。提示された日程の読み方に迷っている段階からご相談いただけます。

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監修

ノーコードソリューションズ 代表取締役 仙入功樹

仙入 功樹 せんにゅう こうき

代表取締役

ノーコードソリューションズ COO 吉村祐樹

吉村 祐樹 よしむら ゆうき

COO

本記事はAI導入支援の実務担当が監修しています。中小企業から上場企業まで、AI導入の相談から開発・研修・運用定着までを支援しています。監修者の経歴と登壇実績はメンバー紹介をご覧ください。

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  • […] この右側の列を、着手前に発注側が知っているかどうかで、後工程の進み方が大きく変わります。特に基本設計以降は、開発会社が作業を進めるためには発注側の確認・承認が必要になる場面が多く、発注側の対応が遅れると、そのまま全体の進行が止まります。工程の順番そのものを一から確認したい場合は業務システム開発の進め方ガイドで、要件の固め方から契約形態の選び方までを解説しています。工程ごとの日程の組まれ方はシステム開発のスケジュールはどう決まるかで扱っていますので、あわせてご覧ください。 […]

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