生産管理にAIを使う前に|メリット・デメリットと依頼先の選び方

御社では、受注が入るたびに生産計画を組み直す仕事を、特定の担当者がExcelで抱えていませんか。設備の段取りや取引先ごとの約束を覚えている人が限られ、その人が休むと計画が止まってしまうようなら、この手間の一部はAIで減らせる可能性があります。ただし、計画を決めるところまでAIに任せるのはおすすめしません。AIには計画案づくりや記録の照合の下準備を任せ、計画の確定と、不適合品の処置や出荷の可否は人に残します。そのうえで、まず1つの工程を御社の実績データで依頼先に試してもらってから、発注する範囲を決めてください。試さずに発注すると、AIの案が熟練者しか知らない制約を守れていなくても気づけません。その計画で遅れた納期を取引先に説明するのは御社です。
この記事は、社内で「生産管理にもAIを」と言われた製造業の経営層の方と、上司に説明する生産管理・品質保証の担当者の方に向けて書きました。公的な調査で分かっている数字と、まだ数字がない部分を分けてメリットとデメリットを並べ、依頼先に確認してほしい5つの点をまとめています。
- 生産管理のどの工程にAIが使え、どこに人の判断が残るか
- 生産管理AIのメリット・リスクと、導入前に必要な対策の一覧
- 依頼先に確認する5つの点と、商談でそのまま使える質問
- 生産管理システムを入れ替えるときに、AIのために決めておく3つのこと
- 弊社が架空の工場で試した、制約を伝えない場合と伝えた場合のAIの計画案の違い
生産管理のどの仕事を、AIに任せられるか
生産管理におけるAI活用とは、生産計画・工程の進捗・在庫の引当・品質の記録・原価の集計の各工程で、計画案の作成、計画と実績のずれの検知、記録の照合と検索をAIに担わせる取り組みのことです。担当者の手間がかかっている工程から1つずつ、AIに下準備を任せていく進め方を前提にしています。
計画と実績のずれの一覧や原価の集計は、生産管理システムやMRP(資材所要量計画)の集計機能でもできます。AIを使うのは、受注と設備の空きから計画案を何通りか出す作業や、作業日報や不具合報告の文章から手がかりを探す作業のように、決まった計算式では書きにくい部分です。一方、どの注文を先に作るか、残業や外注で取り戻すか、規格から外れた品物を出荷してよいかは、人が決めてください。
- AIに任せやすい作業
- 人が判断する作業
- 生産計画受注と設備・人の空きから計画案を出す優先順位を決め、計画を確定する
- 工程・進捗作業日報から遅れの原因になりそうな記述を拾う残業・外注・納期の調整を決める
- 在庫引当不足した部材の代わりを過去の手配から挙げる代替品や前倒しの手配を決める
- 品質検査記録を規格値と照らし、ロットをたどる不適合品の処置と出荷の可否を決める
- 原価見積と実績の差が大きい案件の理由を、記録から拾う配賦(共通費の割り振り)の基準と値上げの交渉を決める
図の「人が判断する作業」を誤ると、納期遅れや不良品の流出として取引先に直接届きます。最初に試す工程は、組み直しや確認にかかっている時間を担当者に聞いてから選びます。
製造業のデータ活用は、どこで止まっているか
製造現場のデータを取っている会社は3社に2社ありますが、そのデータを使って効果まで出せた会社は43.9%にとどまります。生産管理に絞ったAIの利用率を示す公的な調査は、見当たりませんでした。
製造現場のデータを「取る」「使う」「効果を出す」の3段階
16.4%取引先など、サプライチェーン内の企業とデータ連携を「実施している」製造事業者2026年版ものづくり白書(2023年調査は19.8%)
6.0%AIの使い道に「生産・物流・サービス提供の計画支援」を挙げた会社(全業種)IPA DX動向2026速報(2026年7月16日)
57.2%AI・デジタル技術を使う課題に「知識やノウハウの取得」を挙げた製造事業者2026年版ものづくり白書
調査の数字と母数を詳しく見る
| 指標 | 数字 | 母数 | 出典(公表時期) |
|---|---|---|---|
| 製造プロセスのデータを取得/活用/活用して効果が得られた | 66.0%/51.4%/43.9% | 製造事業者2,851社 | 2026年版ものづくり白書 概要(元の調査は2026年3月) |
| サプライチェーン内の企業とのデータ連携を「実施している」 | 2023年19.8%→2025年16.4% | 2,786社/3,007社 | 同上。白書は「2年前からほぼ変化がない」としている |
| AI・デジタル技術活用の課題 | 知識やノウハウの取得57.2%、人材の確保47.9%、既存システムや業務との連携が難しい26.0%、自社データの品質や整備が不十分20.8% | 1,338社(複数回答) | 同上 |
| 技能継承のための取り組み | 再雇用や勤務延長で高年齢の従業員に続けて働いてもらう54.8%、継承すべき技能の見える化31.2% | 4,262社(複数回答) | 同上(JILPT調査、2026年5月) |
| AIの用途:生産・物流・サービス提供の計画支援 | 6.0% | AIを導入・試験利用・検討中の会社(全業種) | IPA DX動向2026速報(2026年7月16日) |
| 業務分野別のAI導入率:製造・生産部門 | 34.9%(総務・管理部門は68.3%) | 業務部門ごとの導入率(資料の図表3) | 中小企業基盤整備機構(2026年3月) |
調査ごとに「AI」と「デジタル技術」、「導入」と「活用」の定義が違うため、数字をそのまま比べることはできません。
AIを入れるメリットは、生産管理のどこに出るか
計画を組み直す、遅れを探す、記録をたどるといった下準備をAIに任せれば、担当者は判断に時間を回せます。
生産計画のたたき台をAIが作り、組み直しの時間を減らせる
急な受注や設備の停止が入るたびに、担当者は計画を一から組み直しています。受注の納期、設備ごとの能力、作業者の配置をAIに渡せば、条件を満たす計画案を何通りか出させ、担当者はその中から選んで直す形にできます。計画案を計算するのは、制約を満たす組み合わせを探す計画用のソフト(生産スケジューラ)が中心で、文章を扱う生成AIは、熟練者から聞き取った条件を整理する役目を受け持つことが多くなります。どちらをどう組み合わせるかは、依頼先に確かめてください。ただ、AIによる生産計画の自動作成について、公的機関が効果を数字で示した事例は見つかりませんでした。
遅れの原因の手がかりを、早く拾える
遅れに気づくのが週次の会議では、取り戻す手が限られます。予定より遅れている製番(注文ごとに付ける製造番号)の一覧は、工程ごとの実績が記録されていれば生産管理システムでも出せます。AIを足すと、作業日報や不具合報告の文章から、その製番の遅れにつながりそうな記述を拾って一覧に添えられます。担当者はそれをもとに遅れの原因を確かめ、対応の順番を決めます。AIではありませんが、弊社が入れ替えを手がけた生産管理システムでも、稼働効率や納期遵守率、進行中の仕事を1つの画面に表示し、現場の異常にすぐ気づける運用にしました。
遅れている製番と納期に間に合わない製番を分ける画面は、登録不要の無料デモで操作できます
ロットの追跡と品質記録の照合が速くなる
クレームが入ったとき、そのロットにどの原材料が使われ、ほかにどこへ出荷したかを調べるのに、半日かかっている会社もあるかと思います。弊社が手がけた食品製造業の生産管理システムの入れ替えでは、ロット番号から原材料・製造日・担当ラインまですぐにたどれるようにしました。これはAIではなく、ばらばらだった記録を1つにまとめたことによる効果です。記録が1か所にあれば、検査成績書の数値を規格値と照らし合わせる作業や、似た不具合の過去の記録を探す作業もAIに任せやすくなります。
1つのロット番号から、両方向にたどる
- 原材料A 受入ロット
- 原材料B 受入ロット
- 製造日・担当ライン
- 出荷先1
- 出荷先2
- 出荷先3
検査成績書を読み取って規格値と照らす流れは、登録不要の無料デモで操作できます
熟練者の判断を、言葉にして残せる
2026年版ものづくり白書によると、技能継承のために「継承すべき技能の見える化」に取り組む製造事業者は31.2%で、再雇用や勤務延長で高年齢の従業員に続けて働いてもらう54.8%を下回ります。熟練者が段取りや異常のときに何を見て判断しているかを、聞き取りの音声や現場の写真からAIに整理させると、本人が直せる下書きを短い時間で作れます。弊社の熟練工ノウハウ可視化の開発事例も、AIがフローチャートの下書きを作り、熟練工本人が確認して直す設計にしました。
設備の始業点検や予定表のような身近な記録は、自社で作る方法もあります。研修を受けた建材メーカーの社員の方々は、始業点検の記録アプリを自分たちで作りました(下の事例で紹介しています)。
デメリットとリスク:どこで外れ、何に備えるか
導入を決める前に、AIの案が外れたときの手当てと、記録やシステムを守るための負担も見積もってください。
AIの計画案は、伝えていない制約を守れない
「この設備は色の薄い順に流す」「この取引先の品物は月曜に出す」「この加工は熟練者のAさんしか扱えない」。こうした制約がシステムにもExcelにも書かれていなければ、AIはそれを知らないまま計画案を作ります。依頼先に計画案を出してもらうときは、紙に書かれていない制約を事前に聞き取る工程があるか、案が制約に違反した件数を数えているかを確かめてください。
弊社は2026年10月に、架空の工場のデータで試しました。設備3台を5日間使い、受注12件の生産計画の案を、商用の生成AI(Claude Sonnet)に作らせています。受注の一覧には「区分:精密」と書いておき、精密品は熟練者のいる設備M3でしか加工できないという制約は伝えませんでした。データを変えて作らせた10案のすべてで、精密品を熟練者のいない設備に割り当てていました。精密品30件のうち27件です。同じ制約を文章で渡すと、10案すべてで、用意した3つの制約の違反は0件になりました。制約を伝えない条件でも、残りの2つ(木曜・金曜の不在、色の順番)の違反は0件で、差が出たのは精密品の割り当てでした。この検証は、文章を扱う生成AIに計画案まで作らせた場合の結果で、生産スケジューラの製品を試したものではありません。
精密品30件(10案×3件)を、どの設備に割り当てたか
- 熟練者のいる設備M3
- 熟練者のいない設備(×)
制約を伝えない場合:27件が×
制約を文章で伝えた場合:×は0件
納期は違反の数に含めていません。制約を渡した10案のうち1案では、受注1件が納期に遅れました。この1案は、精密品3件(合計17時間)がどれも2日目までの納期で、設備M3では2日間に16時間しか加工できず、どう組んでも間に合わない条件でした。AIは「間に合わない」とは書かず、1件を遅らせた案を出しています。残業で取り戻すか、納期を相談するかを決めるのは人です。
検証の条件を詳しく見る
架空の工場で、設備M1〜M3(1日8時間)を月曜から金曜まで使う条件にしました。受注は12件で、加工時間は2〜6時間です。うち3件を精密品、残りを標準品とし、納期と色(白・灰・黒)を付けています。受注の組み合わせを変えて10通り作り、1通りごとに独立した会話で計画案を出させました。違反の件数は、出てきた案をプログラムで照合して数えています。
伝えた制約は3つです。1つ目は、精密品は熟練者のAさんしか加工できず、Aさんが扱えるのは設備M3だけ。2つ目は、Aさんは木曜と金曜は不在。3つ目は、設備M1では同じ日に黒の製品のあとで白の製品を流さないことです。AIには2026年10月時点のClaude Sonnetを使いました。受注の件数も通りの数も少ない検証で、実際の工場の制約はこれより多く、複雑です。
見逃しを減らすほど、人の確認に回る量が増える
滋賀県の補助事業で行われた外観検査AIの実証では、120個を判定して不良品の流出はゼロでしたが、良品も含めてNG(不良の疑い)と判定した割合が29%で、目標の10%以下には届きませんでした(2022年5月公表の成果報告)。不良を見逃さない設定にすると、人が見直す品物が増えます。効果は、AIの正解率だけでなく、人の確認に回る量を含めて見積もる必要があります。
実績データとマスターが整っていないと、案も照合も外れる
AIが計画案を作る手がかりは、品目・設備・工程のマスター(登録した一覧表)と、過去の実績です。同じ部品が工程ごとに別のコードで登録されていたり、着手と完了の時刻が記録されていなかったりすると、AIは正しい案を出せません。ものづくり白書でも、AI・デジタル技術を使う課題として「既存システムや業務との連携が難しい」が26.0%、「自社データの品質や整備が不十分」が20.8%挙がっています。
AIが関わる記録の扱いを誤ると、品質の信頼を失う
検査記録をAIが読み取ったり、AIの案を人が直したりするようになると、どの値をAIが書き、どの値を誰が直したかが分からなくなりがちです。品質の記録は、取引先の監査や不具合の原因調査で後から確かめられる前提で残します。AIが出した値、人が直した値、直した人と日時を分けて記録し、直す前の値を消さない設計にしてください。
工場のシステムがつながるほど、止まったときの影響が広がる
警察庁の「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年9月)によると、2026年上半期のランサムウェア(データを暗号化して身代金を求める攻撃)の被害報告は123件で、業種別では製造業が約3割を占めました。1か月未満で復旧できた組織は5割弱にとどまります。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向けの1位はランサム攻撃、2位は委託先などを狙った攻撃で、3位には「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて入りました。生産管理とAIをつなぐときは、止まったときに手作業へ戻す手順と、依頼先とのセキュリティの分担を先に決めておいてください。
図面や配合を外部のAIに渡すときは、契約を先に確かめる
外部のAIサービスを使うなら、入力したデータがAIの学習に使われないか、どのくらいの期間、どこの国で保存されるかを、契約と設定で確かめてください。取引先から預かった図面や仕様書は、秘密保持契約で外部への提供が制限されていることがあります。主な取引先との契約を確かめてから入力します。
| 観点 | メリット | デメリット・リスク | 打ち手 |
|---|---|---|---|
| 計画 | 計画案を何通りか出し、組み直しの時間を減らす | 紙に書かれていない制約を知らない。公的な効果の数字はない | 制約を聞き取って渡し、制約違反の件数を数える |
| 進捗 | 遅れの原因の手がかりを作業日報から拾える | 実績の時刻がないと、ずれを測れない | 工程ごとの着手と完了を時刻つきで残す |
| 品質 | 記録を1か所に集めればロットを追いやすくなり、検査記録の照合はAIで補える | 見逃しを減らすと、人の確認が増える | 人の確認に回る量を含めて効果を見積もる |
| 記録 | 熟練者の判断を言葉にして残せる | 誰が書き、誰が直したかが分からなくなる | AIの値と人の修正を分けて残し、直す前の値を消さない |
| 情報 | 社内の作業標準や不具合報告を根拠に答えられる | 図面・配合の学習利用・保存・海外での処理 | 学習・保存期間・処理する国と、取引先との契約を確かめる |
相談の前に、社内で何を準備しておけばよいか
依頼先に相談する前に、社内で次の4つをそろえておくと、話が具体的になり、見積もりの前提もそろいます。担当者の方が上司に報告するときの材料にもなります。
- 1組み直しの時間を聞く
- 2データの置き場所を書き出す
- 3紙にない制約を聞く
- 42〜3社に同じ条件で聞く
工程ごとに、組み直しと確認にかかる時間を担当者に聞く
生産計画を週に何回組み直し、1回に何時間かかっているかを聞きます。進捗の確認、部材の引当の確認、検査記録の転記についても同じように聞きます。時間を多く取られている工程が、御社で最初にAIを試す候補です。
計画と実績のデータが、どこにあるかを書き出す
受注、生産計画、工程の実績、検査記録、ロット番号が、どのExcel・紙・システムにあるかを書き出します。同じ品目が工程ごとに別のコードになっていないかも確かめます。整理に時間がかかりそうなら、AIより先に置き場所とコードをそろえてください。
紙に書かれていない制約を、熟練者から聞き取る
段取り替えの順番、設備ごとの得意・不得意、取引先ごとの約束、特定の人しか扱えない作業を書き出します。この一覧が、AIに計画案を作らせるときの前提条件になります。
依頼先2〜3社に、5つの確認点を同じ条件で聞く
1から3の材料を同じように渡し、商談用の質問表で答えを比べてください。御社の実績データで試す提案があるか、紙にない制約をどう聞き取るかを見ると、依頼先の違いがはっきりします。
ここまでのまとめ|上司への報告にそのまま使えます
- AIに任せやすい計画案のたたき台、作業日報からの遅れの手がかり探し、不足した部材の代わりの候補出し、検査記録と規格値の照合
- 人が決める優先順位と計画の確定、残業・外注の判断、不適合品の処置と出荷の可否、原価の配賦の基準
- 公的な数字製造現場のデータを取っている会社66.0%、活用して効果が得られた会社43.9%(2026年版ものづくり白書)
- 弊社の検証制約を伝えないと、AIの計画案10案すべてで精密品を熟練者のいない設備に割り当てた(30件中27件)。文章で伝えると0件(架空のデータ)
- 効果の目安週の組み直しの回数×1回の時間×4週から、AIの案を確かめて直す時間を引く。例:週5回・1回2時間なら月40時間。AIの案を確かめて直すのが1回30分になれば月10時間で、差は30時間(仮の数字)。データの整理や制約の聞き取りにかかる最初の手間は、別に見込む
- 始める前にそろえる工程ごとの時間、データの置き場所、紙にない制約、2〜3社への同じ条件での相談
生産管理システムの入れ替えとAIは、どちらを先に進めるか
生産管理システムの入れ替えとAIの導入を、同時に進める必要はありません。ただ、AIのためのデータの残し方は、入れ替えの要件定義(システムに求めることを決める段階)で決めておくと、後から足すより手戻りが少なく済みます。稼働後に足すと、データ移行のやり直しになりやすくなります。
経済産業省の委員会が2025年5月28日にまとめた報告は、ユーザー企業の61%がレガシーシステム(長年の改修で複雑になった古いシステム)を持っているとし、入れ替えるときはまずパッケージやSaaS(クラウドで使う既製のシステム)に移せないかを検討するよう求めています。この方針に沿うなら、AIや周辺の仕組みを自社向けに作るのは、既製品に合わせられない部分だけです。
- ここで決めておくと安く済む要件定義
- 工程ごとの着手・完了・数量・不良を時刻つきで残す
- 受入・製造・出荷のロット番号を、前後の工程の番号とひもづけて残す
- 品目・設備・工程のマスターに、別名と制約を持てる形にする
- ここで決めておくと安く済むデータ移行
重複したコードと使わない品目を整理して移す
- 稼働
業務が落ち着くのを待つ
- 運用
AI本体はここから。遅れの検知や記録の照合のように、外れても影響の小さい工程から試す
とくに1つ目の時刻つきの実績は、AIが計画と実績のずれを測るときの手がかりになります。試すあいだは、確認にかかった時間と誤りの件数を記録し、任せる範囲を広げるかを判断します。
生産管理の製品を選んでいる最中なら:提供元に聞いておく3つの質問
いま生産管理システムやERPの製品を比べているなら、AIを入れるかどうかが決まっていなくても、製品の提供元に次の3つを聞いておいてください。答えを聞いておけば、後からAIを足しやすい製品を選べます。
| 聞くこと | なぜ聞くか |
|---|---|
| 工程ごとの実績を、時刻つきでCSVやAPIから取り出せますか | AIが計画と実績のずれを毎日測れる |
| ロット番号から、原材料と出荷先の両方向にたどれますか | クレームのときに原因と回収の範囲をすぐ調べられる |
| 記録を直したとき、直す前の値と直した人の記録は残りますか | AIの値と人の修正を分けて残し、監査で説明できる |
- デモの計画案がよく見えたので全工程の自動立案を決めたが、段取りの制約が入っておらず、結局は担当者が手で直していた
- 工程ごとのロット番号が前の工程の番号とひもづいておらず、AIを入れても原材料までたどれなかった
- 開発費だけで依頼先を比べ、マスターを変えたときの再検証が別料金だと稼働後に分かった
基幹システムの基本と入れ替えの流れは基幹システムとは何かを解説した記事で、要件の固め方は業務システム開発の進め方でまとめています。
生産管理のAI化を頼む先は、どう選べばよいか
中小企業基盤整備機構が2026年3月にまとめた調査では、AIについて「適切なベンダーや製品を選定する情報」が足りないと答えた会社が79.8%にのぼりました。依頼先を比べるときは、AIの技術力より先に、次の5点を見ます。
AIに任せる工程を、現場の聞き取りから一緒に決めるか
計画・進捗・在庫・品質・原価のどこに手間が集まっているかを現場で聞き取り、AIに任せる工程と人が決める工程を分けてくれるかを見ます。最初の提案が「生産計画を全部自動で立てられます」だったら、少し立ち止まってください。紙に書かれていない制約を聞かないまま話している可能性があります。
既存のシステムとどうつなぐか、どの値を採用するか決めているか
品目コードや標準工数は、生産管理・販売管理・会計のどのシステムの値を採用するかを先に決めます。依頼先には、その前提でAIの結果を生産管理システムに取り込む方法を説明してもらってください。どの値を採用するかが曖昧だと、AIの計画案と基幹システムの数字が合わなくなります。
自社の実績データで、案や判定の精度を測って示すか
依頼先には過去の受注と実績を渡し、制約に違反した件数、人が直した案の割合、確認にかかった時間を示してもらいます。この3つを先に決めておくと、依頼先どうしを同じ物差しで比べられます。
例外・承認・権限・記録を設計に含めているか
特急の割り込み、設備の故障、不適合品の扱いといった例外をどう処理するか、誰が計画を承認するか、誰がどのデータを見られるかまで、設計に入っているかを確かめます。記録には、AIが出した案、人が直した内容、承認した人と日時、使ったモデル(AIの中で答えを作る部分)の版を残し、直す前の値を消さないのが基本です。
稼働後に精度を測り直す体制と契約になっているか
品目や設備が変わったときに精度を測り直し、AIに任せる範囲を見直す体制があるかを確かめます。経済産業省の「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(2025年2月18日)は、準委任と請負の違いを重要な点に挙げ、AIは性能を保証しにくいとしています。準委任は多くの場合、作業をきちんと行う約束で結果は保証せず、請負は完成品を納める約束で不具合を直す責任があります。
障害でAIが止まったときに手作業へ戻す手順と、工場のネットワークにつなぐときのセキュリティの分担も、この段階で聞いておきます。
商談では、次の質問をそのまま使えます。
| 確認点 | 依頼先に聞く質問 | 安心できる答えの例 |
|---|---|---|
| 1 工程の切り分け | 当社のどの工程からAIを入れるべきだと考えますか | 現場で時間と制約を聞いたうえで、工程を1つに絞って提案する |
| 2 既存システム | 品目コードや標準工数は、どのシステムの値を採用しますか | 採用する値と連携方法を図で示す |
| 3 精度の測り方 | 当社の過去の実績で、計画案を試せますか | 検証の期間と件数、制約違反や修正の割合など測る指標を先に決める |
| 4 例外と記録 | 特急の割り込みはどう扱いますか。誰が計画を確定したかを後から追えますか | 例外を人に回す条件と、案・修正・承認者の記録の残し方を説明する |
| 5 稼働後 | 品目や設備が変わったとき、誰が精度を確かめますか。AIが止まったらどうしますか | 再検証の手順と費用の扱い、手作業へ戻す手順を示す |
依頼先の種類ごとの向き不向きを見る(生産管理パッケージ、生産スケジューラなど6種類)
頼める先を、この記事では便宜上6つに分けました。どれが優れているかは、御社の状況によって変わります。弊社は最後の、業務システムとAIを両方開発する会社にあたります。独自に作った部分は保守が続くため、担当者が交代した後の体制も確認してください。
| 依頼先の種類 | 向いている場面 | 確認しておきたい点 |
|---|---|---|
| 生産管理パッケージ・ERP製品のAI機能 | 業務を製品の標準に合わせられる | 自社の例外や独自の記録に対応できるか。AI機能の追加費用と、使えるデータの範囲 |
| 生産スケジューラの製品 | 計画の組み直しが多く、制約を設定で表せる | 紙にない制約を設定に落とす作業を誰がするか。実績データとのつなぎ方 |
| 大手のシステム会社 | 全社の基幹システムをまとめて入れ替える | AIの部分の担当者と再委託先。検証の段階を契約で区切れるか |
| 社内のIT部門・IT子会社 | 工程とデータを最もよく知る人が作れる | AIの評価と運用に割ける人員。担当者の異動で止まらないか |
| AIを専門とする開発会社 | 外観検査や需要予測など、新しい使い方を検証したい | 既存の生産管理や会計とつなぐ実績があるか |
| 業務システムとAIを両方開発する会社 | 製品の標準に合わない部分だけを、AIと周辺の仕組みで補いたい | 独自に作った部分は保守が続く。担当者が抜けたときの代替体制、再委託の有無、全社規模の入れ替え実績 |
基幹システムの外注先を比べる観点は基幹システム開発の外注先を比べる5つの基準で、AI開発を内製するか外注するかの分かれ目はAI開発の外注と内製の分岐点で整理しています。
弊社は、生産管理のAIをどう進めているか
弊社の進め方は会社ごとに変えますが、生産管理システムの入れ替え、熟練工のノウハウ可視化、見積書の自動作成では、次のように進めました。
- AIより先に、ばらばらの記録を1か所にまとめます食品製造業の生産管理システムの入れ替えでは、部門ごとのExcelや個別のシステムに分かれていた受注・生産計画・在庫・品質・設備保全を一画面にまとめ、ロット番号から原材料・製造日・担当ラインまでたどれるようにしました。AIに計画案や照合を任せるのは、記録がこうしてそろってからです。根拠:生産管理システムの入れ替えの開発事例
- AIの出力は、熟練者が直せるたたき台にしますAIが熟練工の判断の流れをフローチャートの下書きにし、熟練工本人が判断の条件や作業の順序に誤りがないかを確かめて直す設計にしました。根拠:熟練工ノウハウ可視化の開発事例
- 対象のデータで先に試してから、範囲を決めます見積書の自動作成では、複雑な図面にどこまで対応できるかを、対象の図面で先に検証してから導入する範囲を設計しました。根拠:見積書自動作成の開発事例
- 外に出る前に、人が確かめる流れを残しますAIが作った見積書は、担当者がプレビューで確かめてから送る流れにしました。生産計画に当てはめるなら、担当者が制約に違反していないかを確かめ、直した内容と承認した人・日時を残してから現場に流します。根拠:見積書自動作成の開発事例
工場の記録とAIには、どの法令が関わるか
AIのために新しく覚える法律は、ほとんどありません。AI推進法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律、2025年9月全面施行)に罰則はなく、国の「AI事業者ガイドライン」にも法的な拘束力はありません。AIを使っても、今までの法令はそのまま当てはまります。
生産管理のどこに、どの法令が関わるか
法令ごとの注意点を詳しく見る
| 法令 | 生産管理のAIで気をつける点 |
|---|---|
| 食品衛生法・HACCPに沿った衛生管理 | 2021年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理の対象になった。衛生管理の記録をAIや自動の仕組みに移しても、記録を残し、誰が確認したかを追えるようにする。食品衛生法第3条第2項は、仕入元の名称などの記録を作って保存するよう努めることを求めている |
| 製造物責任法 | 引き渡した製造物の欠陥で人の生命・身体・財産に損害が出たときは、製造業者などが賠償の責任を負う。AIが立てた計画やAIの判定で欠陥のある製品を出しても、責任は製造した会社に残る |
| 取適法(2026年1月1日施行、旧下請法) | 部品の加工や組立などを他の事業者に委託する取引は製造委託に当たり、委託する会社と受ける事業者の資本金・従業員数が基準に当てはまると取適法の対象になる。対象の場合、発注内容の明示、取引記録の2年保存、受領から60日以内の支払が義務になる。代金の手形払いや、受託する事業者から価格協議を求められたのに応じず一方的に代金を決めて利益を不当に害することも禁止された。AIで外注の手配を自動化しても、発注内容を明示する義務は残る。加工を受託する会社から見れば、受領から60日以内の支払と手形払いの禁止は、委託元に求められる条件になる |
| ISO 9001などの品質マネジメント | 認証を受けている会社は、AIが関わる検査記録や計画の記録を、品質マネジメントシステムで管理する文書化した情報に含めるかを決めておく |
| 医薬品・医療機器などの業種別の省令 | 該当する業種は、記録の信頼性について省令の要件がかかる。AIを入れる前に、その要件を先に確認する |
内容は2026年10月8日時点の公表資料をもとにしています。自社の外注取引が取適法の対象になるか、AIが関わる記録を監査でどう説明するかは、会社ごとに答えが変わります。顧問の弁護士や認証機関に確認してください。
生産管理のまわりで、弊社が手がけた開発と支援
「実際にはどんなものを作るのか」をイメージしていただけるよう、弊社が手がけた開発と支援のうち、生産管理に近い4件を紹介します。
開発事例|食品製造業生産管理システムの入れ替え部門ごとのExcelに分かれていた受注・計画・在庫・品質を一画面にまとめ、ロット番号から原材料と担当ラインまでたどれるようにしました。事例を読む
開発事例|製造業・技能継承熟練工のノウハウ可視化聞き取りの音声や現場の写真から、AIが判断の流れをフローチャートの下書きにし、熟練工本人が確かめて直す仕組みです。事例を読む
研修事例|建材メーカー・株式会社タブチ様始業点検や成型予定のアプリを社員が内製研修を受けた社員の方々が、始業点検表や成型予定の管理など業務アプリを6本作りました。始業点検の記録は75%短くなりました(社長の見立てで実測値ではありません)。事例を読む
開発事例|製造業・卸売・小売受注書OCR&管理システム生産計画の入口になる受注を、FAX・紙・PDFの注文書から読み取り、印の付いた項目だけを人が確認する仕組みです。事例を読む
無料デモ|登録もインストールも要りません
読むより、触ったほうが早いかもしれません
受注生産の進み具合を追う画面から、検査成績書の読み取り、作業標準を根拠に答える社内検索まで、架空のデータで実際に動かせます。画面の並びより、御社の現場でどこに手間がかかりそうかを見てみてください。
デモ一覧を見るロットごとの在庫の差異をたどる在庫と棚卸のデモや、基幹システムの体験デモもあります
よくある質問
まとめ|生産管理のAIは、1つの工程で試してから範囲を決める
依頼先の検証結果は、計画案の出来だけでなく、制約に違反した件数と、人が直した割合、確認にかかった時間で比べてください。案を直す手間が組み直しの手間より大きいなら、AIに任せる工程を見直します。
生産管理システムの入れ替えを控えているなら、その要件定義で、実績を時刻つきで残すことと、ロット番号を工程どうしでひもづけて残すことを決めておいてください。後からAIを足しやすくなります。品質の記録の残し方は、顧問の専門家や認証機関とあわせて確認してください。
弊社は京都市左京区(百万遍)を拠点に、生産管理を含む業務システムとAIの開発を、工程の洗い出しから運用まで担っています。どこから手を付けるか決まっていない段階からご相談いただけます。
登壇・セミナー実績
神戸商工会議所・石川県庁など、各地の商工会議所や自治体でAI活用セミナーに登壇しています。
監修
仙入 功樹 せんにゅう こうき
代表取締役
吉村 祐樹 よしむら ゆうき
COO
本記事は代表取締役とCOOが監修しています。弊社は、AI導入の相談から開発・研修・運用定着までを支援しています。監修者の経歴と登壇実績はメンバー紹介をご覧ください。
ご相談と資料
読んだ内容を、
自社の業務に当てはめたい方へ
どの業務から手を付けるか、何を作るかが決まっていなくても構いません。30分の無料相談で、今の状況から伺います。
ご相談はオンラインでも、京都・百万遍のオフィスでもお受けします。秘密保持契約を先に結ぶこともできます。










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