次世代EDIとは|移行先3パターンと5つの手順

「EDIをそろそろ移行しないといけない」という話は、多くの会社ですでに一度は出ています。問題は、移行が済んだ会社の中にも「取引先ごとの画面がまた増えた」「結局、以前と同じ手作業が残った」というところが少なくないことです。回線を切り替えただけで、受発注の中身は変わっていない。この記事では、移行先の3つのパターンをどう選び分けるか、進め方の手順、そして移行後にAIで広げられる範囲を整理しました。
- 「次世代EDI」で実際に変わる3つの要素(回線・規格・つながり方)
- 移行先の3パターンと、どれを選ぶべきかの判断軸
- 移行を進める5つの手順
- 移行しただけで終わらせないためのAIの使いどころ
- 移行でつまずきやすい失敗パターン
「次世代EDI」で変わるのは3つ
EDIの2024年問題そのもの、つまりISDN回線の終了と、それに伴う通信方式の切り替えについては、EDIの2024年問題とツール選定を解説した別記事で詳しく扱っています。この記事はその先、「では、何に乗り換えるのが正しいのか」という移行先の選び方に絞って書いています。
「次世代EDI」という言葉が指しているのは、次の3つがまとめて変わることです。1つだけ変えても、期待していた効果は出ません。
| 変わる要素 | 旧来のEDI | 次世代EDI |
|---|---|---|
| 1. 回線 | 専用線・ISDN回線(INSネット ディジタル通信モード) | インターネット回線(クラウドEDI・Web-EDI) |
| 2. 規格 | 取引先ごとに異なる個別仕様(全銀協手順・JCA手順など) | 業界標準規格(流通BMSなど)または汎用フォーマット |
| 3. つながり方 | 専用端末・専用ソフトでの手入力・転記 | 基幹システムとのAPI連携で自動取込 |
NTT東日本・西日本は、固定電話サービス用のネットワークをIP網へ移行する取り組み(PSTNマイグレーション)を進めており、これに伴ってISDN回線を使ったデータ通信(INSネット ディジタル通信モード)は、これまでと同じ形では使えなくなっていきます。回線だけを新しい方式に切り替えて、規格とつながり方を変えないままだと、数年後にもう一度「見直し」をすることになります。取引先の数が多い会社ほど、この二度手間の影響は大きくなります。
回線だけ変えて終わった会社で起きていること
弊社が相談を受ける中でよく聞くのは、「EDI事業者の言うとおりに回線だけ新しいサービスに切り替えた」というケースです。回線の契約は変わっても、受け取ったデータを人が見て自社システムに入力し直す作業はそのまま残ります。回線の切り替えは「今のやり方を続けるための対応」であって、業務の変化ではありません。次世代EDIという言葉を使うなら、規格とつながり方まで含めて検討する必要があります。
移行先は3パターン、選ぶ軸は取引先で決まる
移行先を決めるとき、製品名から探し始めると回り道になります。先に決めるべきはどのパターンに寄せるかです。自社の都合だけでは決められず、取引先の対応状況に大きく左右されます。
個別Web-EDIを取引先ごとに使い続ける
取引先が用意したWebサイトにブラウザでログインし、画面上で受発注を行う方式です。導入の負担は小さい一方、取引先が増えるほど画面の数も増えます。「つながらないEDIの乱立」とも呼ばれる状態で、担当者が複数の画面を行き来し、データを手作業で自社システムに転記する負担がそのまま残ります。取引先の数が少なく、今後も増える見込みが薄い会社には現実的な選択肢です。
業界標準規格に合わせる
小売・流通業界では経済産業省の支援で標準化された「流通BMS」が普及しており、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務を共通のメッセージ形式でやり取りできます。業界の垣根を越えた選択肢としては、中小企業庁が実証してきた「中小企業共通EDI」もあります。国連CEFACT準拠の共通辞書を使い、受発注双方で業務時間が半減した実証結果が報告されています。取引先の多くが同じ業界標準に対応しているなら、規格をそろえるほうが長期的な負担は小さくなります。
API連携で基幹システムと直結する
EDIという専用の仕組みを介さず、取引先や基幹システムとAPIで直接データをやり取りする方式です。転記作業が原理的に発生しないため、業務時間の削減幅は最も大きくなり得ます。ただし取引先側にもAPI対応が求められるため、自社だけで決められるものではありません。取引先が限られる、または自社グループ内での連携が中心の会社に向いています。
- 取引先の対応状況:主要取引先が業界標準規格やAPI連携にどこまで対応しているか。自社が先行しても、相手が対応していなければ効果が出ません
- 取引先の数と業界:数社の個別対応ならパターンA、業界内で標準規格が普及しているならパターンB、グループ内連携が中心ならパターンCが軸になります
- 基幹システムの改修余地:受発注データを自動で取り込む先(基幹システム・在庫管理システム)の改修にどこまで予算と時間をかけられるか
3パターンは排他的ではありません。主要取引先とはパターンB、その他の少数取引先とはパターンAを併用する、といった組み合わせも現実的です。すべてを一度にそろえようとすると判断が止まるので、取引額の大きい相手から順に決めていくほうが進みます。

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移行を進める5つの手順
今のEDIを棚卸しする
取引先ごとに、通信手順(専用線・ISDN・インターネット)、データ形式、担当システムを一覧にします。取引先が多い会社ほど、ここで想定より数が多いことに気づきます。棚卸しをしないまま移行先を決めると、対応漏れの取引先が後から見つかります。
取引先の対応状況を確認する
主要取引先に、業界標準規格やAPI連携への対応予定があるかを確認します。自社の希望だけでは決まらない工程なので、取引額の大きい相手から順に確認してください。
移行先パターンと基幹システム連携を設計する
パターンA〜Cのどれに寄せるかを決め、受け取ったデータを基幹システムへどう取り込むかまで設計します。回線の切り替えだけで終わらせず、この設計を飛ばさないことが次世代EDIの本体です。
取引先へ説明し、並行運用の期間を合意する
切り替え日を一方的に決めず、取引先ごとにテスト期間を設けます。旧方式と新方式を一定期間並行させ、データの取りこぼしがないかを確かめてから切り替えてください。
段階的に切り替え、残った手作業を洗い出す
一度にすべての取引先を切り替えず、取引額や件数の多い相手から進めます。切り替え後も転記作業が残っている箇所があれば、そこが次にAIや自動化で削れる部分です。
- 回線だけ切り替えて満足する:規格とつながり方が変わらず、手作業も業務時間もほとんど減りません
- 取引先の対応状況を確認せずに規格を決める:自社だけ先行しても、相手が対応していなければ意味がありません
- 全取引先を一度に切り替える:並行運用の検証が追いつかず、受発注データの取りこぼしに気づくのが遅れます
- 基幹システム連携の設計を後回しにする:データは新しい方式で届くのに、結局人が見て入力し直す運用が残ります
移行後、AIで広げられる範囲
API連携や業界標準規格でデータが構造化された形で届くようになると、そのデータをAIで扱える土台ができます。ここは回線を変えるだけでは手に入らない部分です。個別Web-EDIの画面を見ながら手入力している段階では、そもそもAIに渡せるデータがそろっていません。
| 移行の段階 | AIで広げられる範囲 |
|---|---|
| 個別Web-EDIのまま | 画面から必要項目を読み取って転記する作業の一部を自動化(RPA・OCR) |
| 業界標準規格に移行後 | 構造化データをもとにした異常値検知(発注量の急な変化、単価の入力ミスなど) |
| API連携まで進んだ後 | 取引先ごとの発注パターンを蓄積し、欠品・過剰在庫の兆候を早めに把握する分析 |
最後の段階はまだ多くの会社にとって先の話です。まず取り組むべきは、AIに渡せる形でデータが届く状態を作ることであり、順番を飛ばして分析から始めることはできません。紙やFAXでの受発注をデータ化する取り組みは、次世代EDIへの移行と同じ「まずデータにする」という考え方でつながっています。
構造化データが無い段階でできること
移行の途中段階でも、届いたPDFや画像形式の受発注書を読み取ってデータにする取り組みは進められます。受発注の書類をデータ化した事例は、受発注のデータ化事例で紹介しています。EDIの移行と並行して、紙のまま届く分だけでも先にデータ化しておくと、移行後の分析に使えるデータの範囲が広がります。
活用イメージ|受発注まわりの2つの事例
ケースA:受発注の書類をデータにした事例
紙やPDFで届く受発注書をAIで読み取り、システムに取り込める形にした事例です。EDIへの完全移行が終わっていない取引先とのやり取りでも、先にデータ化しておくことで転記作業を減らせます。
ケースB:見積作成を自動化した事例
受発注の前段にあたる見積作成を自動化した事例です。EDIで受発注データがつながっても、その前後の業務が手作業のままでは効果が限定的になります。前後の工程まで見渡す参考になります。
よくある質問
まとめ|回線ではなく、つながり方を選ぶ
次世代EDIという言葉が指しているのは、回線・規格・つながり方の3つがまとめて変わることです。回線だけ新しい方式に切り替えても、規格とシステム連携が変わらなければ、手作業の転記はそのまま残ります。
移行先は、取引先ごとの個別Web-EDIを続けるパターン、流通BMSや中小企業共通EDIといった業界標準規格に合わせるパターン、API連携で基幹システムと直結するパターンの3つです。どれを選ぶかは自社の都合だけでなく、主要取引先の対応状況で決まります。
進め方は、今のEDIの棚卸し、取引先への確認、移行先と基幹システム連携の設計、並行運用での検証、段階的な切り替えの順です。全取引先を一度に切り替えず、取引額の大きい相手から進めてください。
移行が進み、構造化されたデータが届くようになって初めて、異常値検知や発注パターンの分析といったAIの活用範囲が広がります。回線の切り替えを目的にせず、その先のつながり方まで見据えて選んでください。
登壇・セミナー実績


神戸商工会議所・石川県庁など、各地の商工会議所や自治体でAI活用セミナーに登壇しています。現場で得た知見をもとに、京都の中小企業のAI導入を支援しています。
監修
仙入 功樹 せんにゅう こうき
代表取締役
吉村 祐樹 よしむら ゆうき
COO
本記事はAI導入支援の実務担当が監修しています。京都の中小企業を中心に、AI導入の相談から開発・研修・運用定着までを支援しています。監修者の経歴と登壇実績はメンバー紹介をご覧ください。
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