京都航空宇宙産業ネットワーク(KAIN)「AI×ものづくり意見交換会」登壇レポート

京都航空宇宙産業ネットワーク(KAIN)の会員企業向けイベント
「AI×ものづくり意見交換会」にCOO・吉村が登壇しました
開催:京都府中小企業技術センター|会場:KAIN主催の会員企業向け教育イベント「KAINES」|登壇:株式会社ノーコードソリューションズ 取締役COO 吉村 祐樹
2026年8月27日、京都府中小企業技術センターが開いた「AI×ものづくり意見交換会」に、弊社取締役COOの吉村祐樹が登壇しました。会場は、京都府内の航空宇宙関連ものづくり企業でつくる「京都航空宇宙産業ネットワーク(KAIN)」の会員企業向け教育イベント「KAINES」。府内のAIスタートアップ企業とものづくり企業が直接意見交換する場です。AIエージェント「Claude Code」で何ができるのかを紹介し、そのうえで社内のデータをどう整えればAIが働きはじめるのかをお話ししました。当日の様子をレポートします。
ものづくり企業とAIスタートアップが直接話す場でした
この会は、KAINの会員企業向け教育イベント「KAINES」の場で、京都府中小企業技術センターが開いたものです。
プログラムは3部構成でした。第1部は、AI活用を先行している会員企業から、大規模言語モデル(生成AIの中核となる、大量の文章を学習した言語モデル)の学習の仕組みを踏まえた情報漏えいリスクの解説。第2部が府内AIスタートアップ2社による技術紹介で、弊社はここで話しました。第3部は参加者を交えた意見交換です。
登壇した吉村は、京都大学工学部で機械システムと材料科学を専攻し、これまで40件以上のシステム構築をプロジェクトマネージャーとして主導してきました。ものづくりの言葉が通じる相手として話せる、というのが今回お引き受けした理由です。
当日お話しした主な内容
資料をひととおりなぞる時間はないので、3つに絞りました。
- Claude Codeで何ができるか:AIエージェントが実際の業務でどこまで手を動かすのかを、具体的な使い方に沿って説明しました。
- AIを入れる前に社内のデータをどう整えるか:データ化から構造化、AIエージェントの接続までの進め方を、順を追って整理しました。
- 組織で安全に使わせる考え方:契約とプラン、データと権限、運用ルールと教育。どこから手を付けるかを層に分けて共有しました。
Claude Codeで何ができるかを紹介しました
Claude CodeはAnthropicが提供するAIエージェントです。日本語で指示すると、手元のPCにあるファイルを探し、読み取り、新しいファイルを作り、書き換えるところまでを続けて実行します。文章の下書きを返すだけの使い方とは、任せられる範囲が変わります。
ここで必ず補足するのが、扱える範囲の話です。PCに入れた瞬間に中身を全部読み取るわけではありません。読み書きできる範囲は、起動したフォルダ、OSの権限、あらかじめ決めた許可設定、そして利用者が承認した操作で決まります。この前提を先にお伝えしてから、できることの話に入りました。
ものづくりの現場に近い例として最初に挙げたのが、テキストで条件を書くだけで3DCADのモデルを起こす使い方です。ロボットアームの部品と関節角度を扱った例を取り上げました。そのほか、プロンプトだけで作った自社Webサイト、会計ソフトや顧客管理のデータを集めて前月比・前年比・予実差異まで自動で計算する経営ダッシュボード、条件を指定して組ませた営業リストも紹介しています。
ローカルファイルの扱いについては、実際の指示文を挙げました。「PCから領収書データを全て抽出し、Excelにまとめて」「3年で30億円の売上を上げるためにKPI表(目標の達成度を管理する表)をExcelで作成して」。この程度の一文で、ファイルを探すところから表に起こして保存するところまでが進みます。
国内での広がりとしては、メルカリが全社員にClaude Codeを配布している取り組みを、同社が「Claude Code Meetup Tokyo 2026」で公開した資料をもとに紹介しました。エンジニアではない社員が日本語の指示だけで請求書のExcel化や表データの集計を行っている、という内容です。
AIを選ぶより先に、社内のデータを整える
後半はツールの話から離れました。PwCの「日本企業のDX推進実態調査2024」を参照しながら、国内のDX(デジタル技術を使った業務や経営の見直し)の多くが十分な成果に至っていないこと、そこでデータベースの整備と人材育成が論点として挙がっていることを共有しています。AIの性能が上がっても、参照する社内データが散らかっていれば、返ってくる答えは安定しません。
弊社が考える進め方は次の順です。
だから土台のほうが重要になる、というのが当日の結論でした。
弊社が製造業向けに開発してきたものも、この文脈で紹介しました。図面や仕様書を読み込ませて概算見積もりを出す見積書自動作成システム、熟練の職人の判断プロセスを聞き取りから書き起こす熟練工ノウハウ可視化システム、受注から出荷までを一画面で追う生産管理システムの3つです。このうち熟練工ノウハウ可視化システムでは、書き出したフローチャートの裏側をAIが読みやすい構造化データにしてあり、教育プログラムや社内チャットボットへ展開できるようにしています。
安全に使わせる仕組みは、3つの層に分けて考えます
第1部で情報漏えいリスクの解説があったのを受けて、弊社からは安全に使わせるための対策を層に分けて共有しました。
第2層でよく質問をいただくのが、どこまで任せてよいかの線引きです。権限は「読む・作る・変える・送る」の4つに分けて考えます。最初は「読む」「新しく作る」に留め、元のファイルを「変える」操作と、メール送信や社内システムへの「送る」操作は、段階的に開放する。業務のほうも、ファイル整理やデータ集計、議事録の下書きは任せやすい一方、契約の最終判断や顧客への最終回答、発注や契約締結は人が決めるものとして分けておきます。
第3層では、利用者に何を教えるかを話しました。操作方法だけでは足りません。AIは間違えることがあり、指示した範囲を超えて変更することもあり、もっともらしい説明に根拠がないこともあります。だから利用者には、作業対象を限定する、最初に計画を出させる、元ファイルを変更させない、といった指示の出し方を教えます。あわせて、数字の照合、出典の確認、変更差分の確認というレビューの手順も渡します。
会社が把握していない個人アカウントでの利用は、正規の利用環境がないことに加えて、申請手続きが複雑であること、ルールが曖昧であること、個人アカウントのほうが便利に感じることなどが重なって起きます。禁止するだけでは見えない利用が増えるので、安全に使える正規のルートを先に用意する。この順番だけは崩さないほうがよい、とお伝えしました。
講演のあとは、参加各社との意見交換へ
第3部では、参加された会員企業の皆さまと意見交換の時間をいただきました。各社が現場で抱えている課題を出していただき、それに対する解決策を一緒に考える形です。
当センターでは、AI・ロボティクスの社会実装が加速する時代を見据え、ものづくり中小企業の現場課題解決支援と府内AIスタートアップ企業の成長促進の両立に取り組んでまいります。
関西広域産業共創プラットフォーム「News Letter Vol.36」(2026年8月末発行)掲載/京都府中小企業技術センター「AI×ものづくり意見交換会を実施しました」より登壇を終えて
ものづくりの現場の方々に、AIが実際に何をするところまで来ているかを見ていただける機会は多くありません。京都府中小企業技術センターの皆さま、KAINの皆さま、ご参加いただいた皆さまに、あらためて御礼申し上げます。
弊社は、京都大学で情報学・工学を専攻したメンバーを中心とするAI開発の専門チームです。京都府内でのAI導入については、事例と進め方を京都のAI活用ページにまとめています。
DOCUMENT
当日お話しした「企業DXの進め方」を資料にまとめています
社内のデータを整えてAIエージェントにつなぐまでの進め方と、組織で安全に使うための考え方を1冊にまとめた資料です。社内での共有・検討にそのままお使いいただけます。運用ルールをもう一段細かく決めたい場合は、社内でのAIエージェント運用方法もあわせてご覧ください。
AIエージェント時代の企業DX 実践ガイドをダウンロード
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