【ノーコードソリューションズ|AI Weekly vol.20】先週の重要AIニュース3本(ヤンマー建機、生産計画の時間がAIで半分に ほか2本)
こんにちは。ノーコードソリューションズの仙入です。10月21日の夜、首相がXで「今夜に対応して頂きたい大至急のお願いです」と呼びかけました。AIが見つけた、Webサイトを動かすソフト「PHP」の重大な欠陥への対応です。その前日の10月20日には、ヤンマー建機社が生産計画づくりの時間をAIで半分にした事例を明かし、デジタル庁も政府職員がAIを使うときのルールを公表しています。今号は、AIを仕事に使う場面でも、AIが見つけた欠陥への対応に追われる場面でも、社内の誰が何を受け持つのかを先に決めておくための材料をお届けします。
10月20日、ウイングアーク1st社の記者説明会で、小型の建設機械をつくるヤンマー建機社が、日々の生産計画づくりにAIを使った結果を紹介しました。これまでは2人のベテラン社員が、型式や仕様、機体の色を見ながらExcelの行を手で並べ替え、毎日3〜4時間かけて計画を作っていたそうです。いまはAIが生産の順番の素案を出し、ベテラン社員がそれを画面上で手直しする形に変わり、作成時間は1.5〜2時間と約半分になりました。浮いた時間は、後輩の育成などに充てているといいます。
ヤンマー建機社は、ベテラン社員のノウハウの引き出し方を工夫しています。まず、ベテラン社員への聞き取りでルールや制約を集め、AIへの指示に組み込みました。ただ、自分の判断を言葉にするのは得意ではなく、ノウハウのすべては聞き取れませんでしたが、AIが出した答えのどこがおかしいかは的確に指摘できた、と担当者は振り返っています。また、最初から完璧な計画を求めたわけでもありません。2月にウイングアーク1st社が出した発表では、AIには完璧を求めず、6〜7割ほど合っていれば残りを人が手直しする、という進め方を基本の方針にしたとしています。記事によると、担当者は最初から100点を狙うのは難しいと考え、まず作業時間が半分になれば、ゼロよりはいいというところを狙ったそうです。
従業員985人(2024年4月時点)のヤンマー建機社では、担当者が2020年に入社してからデータの見える化を始め、2022年にDXの専門部署を作り、社内のデータを1か所に集めるなど、準備を重ねていました。記事や発表には、導入にかかった費用は書かれていません。そのため、同じ仕組みをそのまま入れるのは、多くの会社には負担が大きいと思います。ただ、AIでたたき台を作って人が手直しする、という進め方なら、規模の小さい会社でも取り入れられます。ベテラン社員に「判断のルールを全部書き出してください」と頼んでも、手が止まりがちです。そこで、過去の計画や手順書をもとにAIでたたき台を作り、ベテラン社員に修正してもらいます。修正してもらうことで、これまで言語化できていなかった箇所を新しくルールとして追加できます。生産計画に限らず、見積もりや段取り、シフト表の組み方でも同じです。なお、社内の計画や取引先の情報をAIに渡すなら、会社として使ってよいAIかどうかが先に問題になります。まだ決まっていない会社は3本目のニュースを先に読み、決まるまでは社名や取引先名を伏せて試すのが安全です。
10月21日、Webサイトを動かす仕組みとして広く使われているソフト「PHP」に重大な欠陥が2件あると開発元が公表し、日本時間の23時に修正版を出しました。WordPressで作ったサイトも、このPHPの上で動いています。その欠陥とは、ログインもせずに他の人がサーバー上でプログラムを動かせるおそれがある、というものです。報告したのはセキュリティ企業のCalif社とWiz社、それにOpenAI社です。Calif社はOpenAI社のAIモデル「GPT-5.6 Sol」を使って欠陥を見つけ、Wiz社もAIを使った調査で、WordPressなどで作ったサイトを乗っ取れることを確かめています。Amazon社は、攻撃者をおびき寄せるために置いているおとりのサーバーで、公表の4日前には、すでにこの欠陥を狙った攻撃を見つけていたと発表しました(攻撃が成功したかどうかは分からないとしています)。
その夜、高市首相はXで「皆様に、今夜に対応して頂きたい大至急のお願いです」と投稿しました。国家サイバー統括室も、すぐに直せない場合はサイトを一時的に止めることも有効な策の1つだと呼びかけています。実際に、保育施設向けのサービスを手がけるコドモン社は全サービスを止め、Chatworkも予防のために1時間あまり止めました。
一方、エックスサーバー、さくらのレンタルサーバ、ConoHa WING、お名前.comといった大手のレンタルサーバーは、22日から23日にかけて事業者が修正を入れ、利用者がPHPを切り替える必要はないと案内しています(ロリポップ!は8.2以降への切り替えを勧めています)。WordPress.comも、利用者の作業は要らないと明言しています。予約システムやネットショップのカートのように、サービスを借りて使っているだけなら、基本的にそのサービスを運営している会社が改修します。ただし、VPS(サーバーを丸ごと借りて、自分で管理する契約)や自社のサーバーで動かしているサイトは、持ち主が自分で直さなければなりません。制作会社とサイトの保守契約を結んでいなければ、自社のサイトを直してくれる人はいないことになります。
レンタルサーバーを使っている多くのサイトでは、事業者がすでに直しているので、このニュースを読むころには慌てる必要はありません。今回の欠陥が見つかった経緯の1つは、OpenAI社がAIを使ってソフトの欠陥を探して直す取り組みでした。OpenAI社は、同じような発見はこの先数か月で大きく増えると見ています。そうなれば、今回のような夜中の緊急のニュースも、また出てくるでしょう。
PHPの件とは別に、企業からの個人情報の漏えいが相次いでいることを受けて、国も動き始めました。10月23日、自民党は首相に、中小企業向けの「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の補助を大幅に広げることなどを求める提言を出し、首相は「官邸主導で必要な体制を整備」すると述べています。お助け隊は、相談窓口と異常の監視、駆け付け、簡易のサイバー保険を1つの契約にまとめたサービスで、いまもIPAの基準に沿った価格(ネットワークの監視なら月1万円以下・税抜き)で使えます。
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10月20日、デジタル庁は、政府職員が使う生成AIの環境「源内」のルールをまとめた「源内基準」の第1版を公表しました。源内は今年5月から、全府省庁の約18万人の職員を対象にした大規模な実証が進んでいます。今回は、AIが自分で手順を決めてファイルの作成や検索を進める「AIエージェント」の機能を各府省へ順に入れるのに合わせて、使う職員と管理する部署、開発する担当者が守ることを53ページにまとめました。デジタル庁は、民間事業者が自社のAIのルールを考えるときにも広く参考になる、としています。
職員向けの第2章には、民間の会社の社内ルールにも取り入れられる項目が並んでいます。たとえば、AIの出力を職員が確かめないまま、行政資料や公文書にそのまま載せないこと。ファイルの更新や削除、データの登録のように影響の大きい処理は、AIに任せきりにせず、実行してよいかを職員が判断すること。おかしな動きに気づいたら処理を止めて、管理者に知らせること。また、組織が認めていない生成AIを使う「シャドーAI」も禁じ、次の4つを例に挙げています。個人で使っているチャットAIに、非公開の業務資料を入れる。個人のスマホアプリで業務を処理する。業務メールを個人のアカウントのAIに貼る。決裁前の計画案を個人で契約したAIで校正する。
源内では、ルールを決めるだけでなく、危険な操作をシステム設定で最初からできないようにもしています。たとえば各府省へ入れるAIエージェントの機能では、AIが上書きや削除をできるのはAIが作ったファイルだけで、職員がアップロードした元のファイルは書き換えられません。源内工房と呼ぶ高度な開発環境は、最初は使えない設定にしてあり、申請を受けて管理者が認めた職員にだけ使わせます。なお、この基準は源内という政府の環境に向けたもので、民間の会社に守る義務はありません。デジタル庁は、AIエージェントの環境を2027年2月をめどに、商用でも使えるライセンスで無償公開する予定です(ライセンスの名前はまだ示されていません)。
53ページを全部読む必要はありません。社員数十人の会社なら、職員向けの第2章(7ページ分)だけで、社内のルールに使える項目は拾えます。社員がChatGPTやClaudeを個人の判断で使い始めている会社では、いま誰が何を使っているかを書き出し、会社として使ってよいAIを決めるのが先です。そのうえで「入れてはいけない情報」を決めます。源内基準は情報を機密性で3段階に分け、いちばん高い段階は入力を禁じています。自社でも「公開済みの情報」「社内だけの情報」「顧客の個人情報や取引の金額」のように3つに分け、どこまで入れてよいかを決めておけば迷いません。たとえば、予約システムから書き出した顧客の一覧をAIに貼って集計させるのは、3つ目に当たります。
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今号は、ヤンマー建機社の生産計画づくり、AIが見つけたPHPの重大な欠陥、デジタル庁の源内基準を取り上げました。3本とも、AIに任せるところと、人が判断するところを、先に決めておく話です。
今週ひとつだけ選ぶなら、2本目のニュースの、制作会社への確認です。サイトを直す人が決まったら、3本目のニュースの源内基準を参考に社内のルールを決め、そのうえで1本目のニュースのように業務を1つ選んで6〜7割の出来から始める、という順番をおすすめします。2本目のニュースは、AIをまだ使っていない会社にも、すでに届いている話なので、最初に手をつける価値がいちばん高いと考えています。
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