【ノーコードソリューションズ|AI Weekly vol.13】製造業のAI活用3本(図面照合の50〜340分が10分に ほか2本)
こんにちは。ノーコードソリューションズの仙入です。先週はモデルが2本出ました。9月1日にAnthropic社のClaude Fable 5.1、9月3日にOpenAI社のGPT-6 Astraです。同じ9月3日、日立製作所社が「AI品質維持サイクル」という技術を発表しています。AIに任せる業務と条件を先に決めておき、実行の前に業務手順と突き合わせて、利用者への確認、内容の見直し、停止を段階的に行う技術です。想定している業務は設備保守とIT運用でした。別々の会社から新しいモデルが続けて出てくる状況でも、製造業の現場に残るのは、どのモデルを使うかより、任せる範囲と条件をどう決めたかのほうだと見ています。この発表に、過去の事例を2本あわせて読みます。ダイキン工業社の設備故障診断(2025年4月発表)と、パナソニック コネクト社の図面照合(2026年2月発表)です。どちらも先週のニュースではありませんが、すでに現場で試験運用または導入されています。3社が区切った範囲は違いますが、どれも人が確認する工程を残しています。
ダイキン工業社と日立製作所社が2025年4月22日、工場の設備故障診断を支援するAIエージェントの試験運用を始めたと発表しました。場所は、業務用空調機器を生産する堺製作所臨海工場(大阪府堺市)です。保全技術者が生産設備の点検でポンプやバルブなどの故障を見つけたとき、AIエージェントがその原因と対策を保全技術者に提示します。実証では、10秒以内に90%以上の精度で回答できることを確認したとしています。ただし、何を正解とした精度なのか、対象にした故障の種類や検証の件数までは、発表に書かれていません。両社は発表の時点で、試験運用を2025年9月までに完了して実用化し、そのあと国内外のダイキン社の生産拠点へ広げる予定としていました。その後の実用化と展開について、両社からの発表は確認できていません。狙いに挙げたのは、設備保全の暗黙知を組織の知として共有すること、品質の確保と技術の伝承、そして現場の生産性でした。
AIが短くしているのは、過去の記録や図面から原因を探す時間です。設備が止まったとき、この探す時間が復旧を遅らせることがあります。過去に同じ症状が出たことがあるか。そのとき誰がどう直したか。図面のどこを見ればよいか。分かる人にすぐ聞ければ数分で済み、聞けなければ翌日まで待つことになります。10秒で答えが出ても、直すのは技術者です。発表に書かれているのは原因と対策を保全技術者に提示するところまでで、そのあとの採否や修理の手順までは触れられていません。両社が挙げた「暗黙知を組織の知に」という言い方は、頭の中にあるものを取り出して共有するという意味でした。
あまり大きくない工場でも試せます。最初に来るのは故障記録の棚卸しです。過去のトラブル記録が紙のバインダーにあるのか、担当者の頭の中にあるのか、Excelに散らばっているのか。記録が足りなければ、AIは現場に固有の回答を出しにくくなります。直した記録が1か所にまとまっていれば、規模にかかわらず検討に入れます。弊社へのご相談でも、読ませる記録が集まらず、故障診断の検討が止まった例があります。止まった理由は精度ではありませんでした。
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まずやること|代表・仙入から
直近で設備や仕組みが止まった件を1つ思い出して、原因にたどり着くまでに誰へ何を聞いたかを書き出してみましょう! AIの精度を調べるより、記録がどこにあるかを先に見るほうが早いと思っているので、まずは1件ぶんだけ辿ってみましょう!
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日立製作所社が9月3日、AIエージェントを重要な業務へ適用するための「AI品質維持サイクル」技術を開発したと発表しました。狙いは、どの業務を、どの条件で、どこまで任せられるかという判断を支えることです。技術は3つで構成されています。1つ目が業務観点での品質評価です。AIの出力精度だけでなく、業務手順、証跡、運用ログ、後続業務への影響、責任分担といった観点から、AIに任せる業務範囲と利用条件を定義します。2つ目が実行時制御です。AIエージェントの処理が業務手順に沿っているかを実行の前に検証し、内容の見直し、利用者への確認、停止を段階的に行います。3つ目が、OTとIT(工場や設備を動かす技術と、情報システムを運用する技術)の両方の知見に基づく品質の維持です。想定している業務は設備保守とIT運用で、将来はHMAX AI Operationsの一部として提供することを見据えています。
1本目のダイキン工業社の例では、AIが受け持つのは原因と対策を提示するところまででした。日立社の技術は、その範囲と条件を業務ごとに定義して、実行時に制御しようとするものです。挙げられているのは、出力精度に加えて確認する業務上の観点です。証跡の残し方、後続業務への影響、間違いが出たときの責任分担。これらは会社ごとに決めることになります。先週出た2本のモデルを見ると、GPT-6 Astraは事前に学習していないルールの課題を解く指標を7.8%から99.9%へ動かし、Claude Fable 5.1はキャッシュ(同じ前提の文章を毎回送り直さずに済ませる仕組み)の読み込み料金を75%下げました。性能も料金も動いています。それでも、いま挙げた3つはモデルを替えても決まりません。止まったり誤ったりしたときの影響が大きい業務では、平均の正答率と、その業務に組み込めるかどうかが別になります。たとえば設備の保守記録を書かせる場合、100件のうち95件が問題なくても、残り5件が点検の抜けにつながるなら現場は使えません。実行の前に業務手順との突き合わせを入れておけば、手順に沿わない処理を人の確認へ回せます。ただし、手順どおりに生成された誤りは、この検証では拾えません。そこは別に確かめる必要があります。
あまり大きくない会社でも、検証の仕組みを組む前に、条件を紙に書くところから始められます。見積書の作成でも、受入検査の記録でも構いません。1つの業務について3行だけ決めます。AIに渡してよい書類とデータはどれか。出てきた結果を誰が確認するか。どうなったら人へ戻すか。抜けるのは3行目です。弊社へのご相談でも、始めるときの条件は決まっているのに、おかしな結果が出たときの戻し先が決まっていない例があります。担当者が自分で直してしまい、そのまま誰にも共有されません。止める条件と戻し先に加えて、失敗を書き留める手順まで決めておくと、次にどこを直すかを記録から選べます。
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まずやること|代表・仙入から
いまAIに任せている業務を1つ選んで、渡してよい書類、結果を確認する人、人へ戻す条件の3行を書き出してみましょう! 精度を上げる工夫より外れたときに止まる形を先に作るほうが結局は早いと見ているので、3行目から埋めましょう!
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パナソニック コネクト社が2026年2月19日、設計・開発部門の図面と設計仕様の照合業務に、独自開発の「Manufacturing AIエージェント」を使い始めたと発表しました。これまで目視で確認していた照合は50分から340分かかっていました。それが10分になります。削減率にすると80%から97%です。仕組みは、複数のPDF図面からテキストを自動で抽出し、製品図面と部品図面、あるいは技術仕様書とのあいだで材質や仕上げなどの項目を照合するというものです。Snowflake社のデータクラウド上で、同社のAI機能であるCortex AIを使って内製しました。発表では、担当者は複数の書類を見比べる必要がなくなり、AIの支援のもとで確認作業を終えられるとしています。確認は人に残る形です。適用は規格の照合と外装部品の照合から始め、そのあと他の照合業務へ広げる計画です。狙いに挙げたのは、人為的ミスに起因する手戻りと、そこから生じる経済的損失のリスクを減らすことでした。
数字の幅に読みどころがあります。50分の照合も340分の照合も、どちらも10分になっています。削減の幅が大きいのは、もともと長くかかっていた照合のほうです。なぜ340分かかっていたのかは、発表に書かれていません。AIを入れる工程を選ぶとき、件数の多い作業から手を付けたくなりますが、1件あたりが長い作業のほうが差は出ます。もう1点、照合は確認の基準を決めやすい作業です。どの図面を正本にするか、どの改訂番号で見るか、どの項目を突き合わせるか。これらを先に決められます。文章の要約のように、良し悪しが読む人によって変わる作業とは違います。最初に選ぶ工程の候補になります。ただし安全かどうかは、間違えたときの影響と、人がどこで確認するかまで含めて決まります。
同じ性質の作業は、規模の大きくない製造業にもあります。受注時の仕様書と図面の突き合わせ、見積書と発注書の型番の照合、検査成績書の転記の確認。どれも基準を決めやすく、間違えると手戻りが大きい作業です。最初にやることは、1件あたり何分かかっているかを測ることです。感覚で答えた時間と、実際に測った時間はずれることがあります。同じ作業でも1件ごとに差が出るので、数件は測ってみてください。測った数字があると、AIを入れるかどうかの判断が変わります。30分の作業を10分にしても、月に3件なら効果は1時間です。同じ30分でも月に80件あるなら話が変わります。ここに導入と運用にかかる費用、確認にかかる手間、間違えたときの影響を足して決めます。
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まずやること|代表・仙入から
目視で突き合わせている作業を1つ選んで、1件あたり何分かかっているかを数件ぶん測ってみましょう! どの工程から始めるかは、他社の事例より自社の実測で決めるほうが早いと感じているので、月に何件あるかも一緒に数えましょう!
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前号では、社外のAIサービスに渡してよい情報の線引きを伺いました。今号で見たのは、3つの区切り方です。原因と対策を提示するところまで。実行の前に手順と突き合わせるところまで。基準を決めやすい照合から。区切った範囲は3社とも違います。共通しているのは、人が確認する工程を残していることです。今週ひとつだけ試すなら、3本目の実測です。弊社がご相談を受けるときも、最初に伺うことが多いのは1件あたりの時間です。任せる条件を決めるにも、どの工程から入るかを選ぶにも、そこが分からないと比べようがないと考えています。数件を測れば、1件あたりの時間とばらつきが見えます。そこに月の件数を掛けて、費用と確認の手間を足せば、その工程にAIを入れる価値は自分で見積もれます。出てきた数字の読み方で迷われたら、弊社と一緒に見ましょう。
今号で伺いたいのは、御社で止まると困る工程がどこかです。設備、検査、出荷前の確認、受注時の仕様の確認。ひとつだけ挙げて、このメールにそのまま返信でお送りいただければ十分です。次号の内容に反映します。
初回30分の無料相談では、いまの現場を伺ったうえで、
最初に任せる1工程と、人へ戻す条件を一緒に整理します。
弊社が何をどこまで手がけるのかは、サービス紹介資料にまとめています。
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