【ノーコードソリューションズ|AI Weekly vol.7】先週の重要AIニュース5本(最上位級の性能が半額に、Claude Opus 5ほか)
こんにちは。ノーコードソリューションズの仙入です。先週は、AIの値段が大きく動きました。Anthropic社が、同社最上位に迫る性能の「Claude Opus 5」を、その半額の料金で公開しました。去年「精度が足りない」「費用が見合わない」で見送った検討は、同じ内容でも結論が変わります。国内では、熟練エンジニア5人で3日かかっていた障害解析を30分で終えたNTTデータグループの事例が公開されました。政府はマイナンバーカードとAIエージェント(調べて答えるだけでなく、その先の手続きまで実行するAI)の連携を国の計画に明記し、自民党は政府のAI政策部局を80人以上へ増やす緊急提言を出しています。OpenAI社は、企業の問い合わせ対応を担うAIエージェントの基盤も発表しました。今号も5本それぞれに、「で、自分はどうすればいいか」まで添えてお届けします。
7月24日、Anthropic社が新モデル「Claude Opus 5」を公開しました。API料金は入力100万トークンあたり5ドル、出力25ドルで、前世代のOpus 4.8と同額です。同社の最上位モデルFable 5は入力10ドル・出力50ドルなので、半額で近い性能が使えることになります。開発作業を測る評価「Frontier-Bench v0.1」では、Opus 4.8の2倍を超えるスコアで全モデル中トップに立ちました。初見の問題を解く評価「ARC-AGI 3」では2位のモデルの3倍、業務を最後までやり切れるかを試す評価では、同じ費用で2位の約1.5倍の合格率です。開発と知識労働の評価では最高水準に立ち、総合ではFable 5に迫る位置づけになりました(サイバー分野は同社のMythos 5が上位のままです)。個人向けでは、有料プランのClaude Maxで既定のモデルになり、Claude Proで使える最上位モデルにもなりました。
安全策の扱いも変わりました。サイバー分野では、正当な業務が誤って遮断される頻度をFable 5より約85%減らす見込みだとしています(同社の評価による数値で、測定方法は公開されていません)。ソースコードから脆弱性を見つける作業は許可され、バイナリを対象とした脆弱性スキャン、ペネトレーションテスト、エクスプロイトの生成は引き続き遮断されます。ただし、有害な用途の遮断率が維持されているかどうかは、公開情報からは確認できませんでした。生物分野の安全策はOpus 4.8と同等に据え置かれ、その結果、一般提供モデルの中でもっとも科学研究に使える位置づけになっています。安全策の判定に引っかかった処理は、Claude.ai・Claude Code・Claude Coworkでは既定でOpus 4.8に引き継がれます(APIは設定で有効にします)。法人で使うなら、どちらのモデルが応答したのかを監査ログで追えるかは、導入前に確認しておきたいところです。
性能が上がったのに料金は据え置かれ、最上位と比べれば半額に収まりました。AI導入の話でいちばん多い反対理由は「うちの規模だと費用が見合わない」ですが、その計算の前提が半年単位で崩れています。AI関連の投資判断を年1回の予算会議に載せていると、決めた頃には前提が変わっています。決裁の単位を小さくして、モデルが変わるたびに組み替えられるようにしておくほうが動きやすいです。去年の見積もりを持ったままの案件があれば、同じ要件で今の価格ならどうなるかだけでも見直す価値があります。
OpenAI社が公開した国内企業の事例です。NTTデータグループは、まずChatGPT Enterpriseを全社に導入し、社内にOpenAI CoE(推進の専門組織)を設けて、ライセンス配布・技術検証・活用事例づくりを進めました。社内調査では96%超が満足と回答し、95%超が生産性の向上を実感しています。その土台の上で、指示を受けて自分で調査・実行・テスト・修正まで行うAI「Codex」を約9,000名に広げました。ある重要な業務システムで複雑な障害が起きたときには、以前なら熟練エンジニア5人で3日かかっていた解析が、Codexでは30分で終わりました(1件の事例として紹介されているものです)。利用ガイドを公開してハンズオン研修を行ったあと、週次のアクティブ利用者は1.4倍に増えました。用途はエンジニア以外の社員にも広がり、交通費の精算フォームへの転記や大量のファイルの整理、Excelのデータ分析などに使われています。展開にあたっては、使ってよいデータ・接続してよいシステム・自動化の範囲・人が確認すべき箇所を定めたセキュリティガイドラインを整備しました。
9,000名は大企業の規模です。ただ、NTTデータグループが踏んだ順番そのものは、規模を問わず真似できます。先に全社へChatGPTを配って日常業務で慣れてもらい、その経験を土台にして「仕事を任せる」AIへ進んでいます。弊社が支援している現場でも、最初からエージェントの構築に入った会社より、まず全員が触ってから範囲を広げた会社のほうが定着が早いです。5人で3日が30分になったのは、手順が決まっていて再現できる作業を、AIに渡せる形へきれいに切り出せたからです。モデルの賢さだけでこの数字は出ません。
使ってよい情報の線引きは、できるだけ早い段階で決めてしまうと楽になります。「大事です」で終わらせず、具体的に分けてしまうのが近道です。手順書やマニュアルの文章、社外に出しても困らない一般的な相談は渡してよい。顧客名、個人情報、単価や原価、図面はそのまま渡さない。この2行を決めるだけで、社内で試せる範囲がはっきりします。担当者の立場なら、データを渡さなくても始められることがあります。自分がやっている作業の手順を、順番どおりに文章で書き出してみる。それだけで、どこまでAIに任せられるかが見えてきます。
7月21日、政府が「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和8年版)を決定し、概要を公表しました。マイナンバーカードのスマホ搭載や次期カード、モバイル運転免許証と並んで盛り込まれたのが、マイナンバーカードやマイナポータルと外部のAIエージェントを安全につなぐための基盤(MCP等)の整備です。MCP(Model Context Protocol)は、AIを外部のサービスやデータにつなぐための共通仕様で、民間でもすでに使われています。報道では2027年度中を目途とされていますが、実装の方針そのものは2026年度に検討する段階です。計画は2030年代半ばに、住民の相談や申請をAIエージェントが代行し、職員の少ない自治体でも行政サービスの質を保てる状態を目指すと踏み込みました。あわせて、政府職員向けの生成AI環境「源内」は、2026年度に全府省庁を対象とした実証を行い、2027年度以降の本格利用へ進みます。次期マイナンバーカードの導入は2029年度中となり、昨年度の計画の2028年度から1年ほど後ろにずれました。
住民票を取る、補助金を申請する。こうした手続きを、本人の代わりにAIエージェントが進めます。今回、それが国の公式の計画に書き込まれました。ただし、行政が同じ仕組みを採用しても、自社のシステムがそのまま行政サービスにつながるわけではありません。認証や権限の管理、データの形式を、それぞれ整える必要があります。いま手をつけられるのは、必要なデータがどこにあり、誰がどう更新しているかを整理しておくところまでです。基幹システムやファイルサーバーの整理は、これまで社内の効率化として語られてきました。行政まで同じ仕組みに乗るなら、外部とつながるための工事でもあります。後回しにしてきた会社は、優先度を一段上げて構いません。弊社が登壇した自治体のセミナーでも、ご担当者からいただく質問は「AIをどう使うか」より「どのデータをAIに触らせるか」に寄ってきています。
7月23日、自民党のデジタル社会推進本部(平井卓也本部長)とAI・web3小委員会が、「AI政策推進機能の抜本的強化に係る緊急提言」を木原稔官房長官に手交しました。提言は7月17日にとりまとめられ、党の公表は7月24日です。
求めているのは、内閣府AI政策推進室の実員を現行の30名弱から80名以上へ拡充することです。あわせて、AISI(AIセーフティ・インスティテュート)と連携した高性能AIの技術評価と、デジタル庁との協働によるAX(AIトランスフォーメーション)推進に必要な技術基盤構想の構築を、今夏から直ちに進めるよう求めています。AI法の施行や関連法令の見直しを先導できる民間人材を20名規模で確保し、国家公務員より高額かつ柔軟な報酬体系を用意することも盛り込まれました。3本目が行政サービスでAIをどう使うかという計画なら、こちらは政策を担う組織の側の話です。
与党が政府に増員を求めた、という段階の話です。政府が決めたわけではありません。それでも、AIの政策を回すには人が足りていないと与党が公式に認めた点は目を引きます。企業に置き換えると、人数より役割の空白が問題になります。AIの利用ルールを決める人、現場から相談を受ける人、例外を承認する人。この3つが決まっているかどうかで、社内の動きは変わります。専任の部門をつくる必要はありません。ただ、利用ルールも相談窓口もツールの契約も誰も管理していない、という状態だけは避けたいです。
7月22日(現地時間)、OpenAI社が企業向けのAIエージェント基盤「Presence」を発表しました。提供は対象となる法人顧客に限った限定的な一般提供で、構築はOpenAI社の導入エンジニアや一部のシステムインテグレーターが担います。自分で契約して使い始められる製品ではありません。音声とチャットのリアルタイム対応が対象で、顧客対応だけでなく、アウトバウンドの営業や社内の高リスク業務も想定されています。
導入は「請求の問い合わせを解決する」「保険請求を支援する」「社員のITリクエストに対応する」といった具体的な仕事を1つ決めてから始めます。エージェントに渡すのはその仕事に必要な知識とシステムの権限だけで、何をしてよいか、いつ承認が必要か、どこから人が引き取るかは企業の側が決めます。運用が始まったあとは、対応の記録や人への引き継ぎからCodexが改善案を出し、本番の版と比べて試したうえで反映していきます。OpenAI社は自社の英語の電話サポート窓口をこのPresenceで動かしており、数週間で人のオペレーターの品質を測る社内基準を満たすか上回る水準に達し、現在は入電の75%を人手を介さずに解決しています。企業側では、ソフトバンク社が自然な日本語での顧客対応をテストしており、BBVA社はメキシコでの日常的な銀行業務の音声サポート、豪保険大手のIAG社は悪天候など需要が集中する場面での対応を、それぞれ検討している段階です。
2本目のNTTデータグループも、AIに任せる範囲と人が確認する箇所を先に決めていました。Presenceは、その考え方を音声とチャットの問い合わせ対応に持ち込む基盤です。弊社が実装するときも、最初に決めるのは権限と引き継ぎの条件で、モデルの選定はその後です。引き継ぎの条件は、本人確認が取れない、金額の変更をともなう、同じやり取りが3往復を超えた、といった形まで具体的に決めておきます。ここが曖昧なままだと、誤った回答や不要な引き継ぎが増えます。
外部のお客様が直接話しかけてくる窓口にAIを置く以上、悪意のある指示を混ぜられたときの挙動や、通話記録の保存先と学習利用の扱いは避けて通れない論点です。今回の発表では、そこまでは公開されていません。導入を検討するなら、正式な仕様と契約条件が出てからが判断のタイミングです。75%はOpenAI社が自社の窓口で出した数字で、そのまま自社に当てはまるわけでもありません。中小企業がいますぐPresenceを導入する話ではありませんが、問い合わせ業務を「AIに任せる部分」と「人が受け持つ部分」に分ける考え方は、規模を問わず今日から使えます。
先週の5本も、それぞれ別々の出来事です。Anthropic社は同社最上位に迫るモデルを半額で出し、費用の前提を動かしました。NTTデータグループは、任せる作業をきれいに切り出せば熟練5人3日ぶんの仕事が30分で終わることを示しました。政府はマイナンバーカードとAIエージェントをつなぐ方針を計画に書き、自民党はその政策を担う部門の増員を提言しました。OpenAI社は、問い合わせ対応を任せる基盤を法人向けに出しています。まわりが当たり前に使い始めたとき、自分だけ触ったことがない状態になっているとつらくなります。最初の一歩は大がかりではありません。以前AIに任せて諦めた作業を1つ、いちばん新しいモデルでもう一度試してみてください。半年前とは違う結果が返ってくることも珍しくありません。その手応えが、次に何を任せるかを決める材料になります。
「これは取り上げてほしい」というニュースがあれば、このメールへの返信で教えてください。次号も来週、先週の重要ニュースを5本に絞ってお届けします。
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