【ノーコードソリューションズ|AI Weekly vol.5】先週の重要AIニュース5本(GPT-5.6が全ユーザーに一般提供ほか)
こんにちは。ノーコードソリューションズの仙入です。先週は、AIのニュースが立て続けに出た週でした。7月9日にはOpenAI社の新モデル「GPT-5.6」が誰でも使える形で公開され、その前日にはイーロン・マスク氏のSpaceXAI社(旧xAI社)も新しい「Grok 4.5」を出しました。高性能なAIが次々と、しかも安く手に入るようになっています。OpenAI社は、聞きながら話せる新しい音声AIも公開しました。一方、米国では企業のAI利用の最大46%を中国製モデルが占めるまでになっています。日本に目を向けると、AI活用が進むかどうかは経営層の姿勢しだい、という調査結果も出ました。一つひとつは別々の出来事ですが、共通しているのは「AIがどんどん実務に近づいている」ということです。脅かしたいわけではありません。今から少し触れておけば十分に追いつけますし、むしろ一歩先に立てます。先週の重要な5本を、それぞれ「で、自分はどうすればいいか」まで添えてお届けします。
7月9日、OpenAI社が新しいAI「GPT-5.6」を、ChatGPT・開発ツールのCodex・APIのすべてで一般提供し始めました。米商務省の追加の審査と協議を経て、誰でも使える形での公開に踏み切ったものです。GPT-5.6は用途別に3つに分かれています。最上位のSol、日常業務向けで前世代(GPT-5.5)と同等の性能を約2倍安く使えるTerra、そして高速で最も安いLunaです。複数のエージェントを並行して動かし、難しい課題により多くの計算を充てる新しい「Ultraモード」も加わりました。料金は100万トークンあたり、Terraで入力2.5ドル・出力15ドル、Lunaで入力1ドル・出力6ドルと、性能の割にかなり手頃です。
新しいのはモデルだけではありません。前日の7月8日には、音声AI「GPT-Live-1」と小型版「GPT-Live-1 mini」も公開しました。これまでの音声AIは、こちらが話し終えるのを待ってから返事をする方式でした。GPT-Liveは聞きながら同時に話せる「全二重」方式で、あいづちを打ったり、話の途中で自然に割り込んだりできます。ChatGPTでは、有料ユーザーの標準音声がGPT-Live-1、無料ユーザーはminiになりました。
見逃せないのは、同じ「GPT-5.6」でも3段階から選べるようになったことです。要約や下書き、定型のやり取りは安いTerraやLunaに任せ、込み入った判断だけ上位モデルに回す。この使い分けができれば、費用を抑えながら任せられる仕事は一気に増えます。会社で導入するなら、モデルを一つに固定せず、業務ごとに最適なものを割り当てる設計が効いてきます。音声の進化も実務に直結します。電話の一次対応や社内のヘルプデスクなど、人が張り付いていたやり取りをAIに任せられる場面が広がりますし、移動中や手が離せないときに声で調べものを頼むだけでも、使える時間は増えます。もう一点、公開に政府の承認が必要だったことにも触れておきます。AIは、国がその使い方や輸出を管理する対象になり始めました。どの国のどのAIを使うかは、これからビジネスの判断材料になります。
7月8日、イーロン・マスク氏が率いるSpaceXAI社が、新モデル「Grok 4.5」を公開しました。AI企業のxAI社がロケット開発のSpaceX社に統合され、7月6日に「SpaceXAI」へ改称した直後の発表です。Grok 4.5は、プログラミングや、複数の手順を自分でこなすエージェント作業に特化した初のモデルです。注目は料金で、100万トークンあたり入力2ドル・出力6ドル。同水準の性能とされるAnthropic社のOpus 4.8(入力5ドル・出力25ドル)と比べ、6割以上安い設定です。第三者の性能評価「Artificial Analysis Intelligence Index」では4位に入り、公開されているオープンモデルやGoogle社のGeminiシリーズを上回りました。マスク氏は「Opus級だが、より速く、無駄が少なく、低コスト」と説明しています。開発ツールのCursorなどから使え、現時点でEU(欧州連合)では未提供です。
前号でお伝えしたAnthropic社の値下げに続き、今度はSpaceXAI社が価格で攻めてきました。高い性能を安く出す競争が、はっきり加速しています。使う側にとっては朗報です。同じ仕事を任せられる選択肢が増えるほど、乗り換えやすくなり、実質的な交渉力も上がります。一社のAIだけに頼り切らず、性能とコストで比べて選ぶ姿勢が、これからは効いてきます。一方で、Grok 4.5がEUで使えないように、AIには国や地域ごとの制約が付いて回ります。導入時は「安いか」だけでなく「自社の環境で問題なく使えるか」も必ず確かめてください。個人でプログラミングや資料作成にAIを使っているなら、こうした新しいモデルを一度試して、手応えを自分の目で確かめておくと損はありません。
7月7日、米CNBCの調査報道で、米国企業のAI利用に大きな変化が起きていることがわかりました。開発者が複数のAIを切り替えて使う中継サービス「OpenRouter」を流れる企業の利用量のうち、中国発のAIモデルが今年2月8日以降、毎週30%以上を占め続け、多い週は46%に達しています。2025年上半期の4.5%、直近1年の平均11%から見ると急拡大です。理由は価格で、公開されている中国製モデルはOpenAI社やAnthropic社の主力より60〜90%安く、中国のDeepSeek社の「V4 Flash」は入力100万トークンあたり0.14ドルと、GPT-5.5の5ドルに対して30分の1以下です。2月には、週あたりの処理量で中国製が米国製を初めて上回る週も出ました。
AIが性能だけでなく、価格でも選ばれるようになり、その受け皿に中国製が入り込んでいます。使う側が学べることは二つあります。ひとつは、AIの料金は競争で下がり続けており、選択肢を比べるだけで費用を大きく抑えられること。もうひとつは、安さだけで選ぶと、データがどの国のどの会社に渡るのか、規制や供給は安定しているのかという別の問題を抱え込むことです。自社で使うAIツールの裏側でどの会社のモデルが動いているかは、意外と見落とされがちです。取引先や顧客への説明責任がある業務なら、価格と一緒に「どこの国の、どの会社のAIか」まで確かめておくと安心です。1本目で触れた政府承認の話と同じで、AIの選択には地政学の視点が入り始めています。
7月9日、ラクスル社が、中小企業のAI活用に関する調査結果を公表しました。代表や役員がAIを「全く使っていない」企業では、その85.7%がAI活用の方針も推進体制も整えていないことがわかりました。業務でAIを積極的に活用している人は全体の31.0%にとどまり、役職別に見ると、代表・役員は積極活用が27.2%と最も低く、「全く使っていない」割合も22.8%で最も高いという結果でした。調査は2026年5月末から6月初めにかけて、従業員2〜100人の中小企業の経営者と従業員あわせて300人を対象に、第三者機関がインターネットで実施したものです。
AI活用が進むかどうかは、現場の頑張り以上に、経営層がどう向き合うかで決まりやすいものです。今回の調査には、それがはっきり表れました。トップ自身が触っていない会社ほど、方針も体制も後回しになり、気づいたときには周りに差をつけられています。経営に関わる方は、難しく構える前に、まず自分で15分でもAIを使ってみてください。実際に触れて初めて、どの業務に効くのか、どこに投資すべきかの勘所がつかめます。旗を振る人が体感していない改革は、社内に根づきません。働く側にとっては、これはむしろ追い風です。経営層がまだ動いていない今のうちに、小さな成功事例をひとつ作って見せれば、社内で頼られる存在になれます。AIを使えるかどうかが、そのまま社内での立ち位置を左右し始めています。
ここで、時期は先週ではありませんが、国内の代表的な実践例を1本ご紹介します。NEC社が2025年12月に商用化した「調達交渉AIエージェントサービス」です。部品を仕入れる際の、納期や数量をめぐる取引先とのやり取りをAIが肩代わりします。グループ会社で行った実証実験では、約1,300品目の部品調達で、担当者が間に入らずAIだけで合意まで到達した割合(自動合意達成率)が95%に達しました。従来は数時間から数日かかっていた交渉開始から完了までの時間も、約80秒まで短縮されています。
「交渉」と聞くと、人にしかできない仕事のように思えます。ところが、条件のやり取りと調整という骨組みの部分は、AIが十分にこなせる段階に来ています。特別な新技術で実現したわけではありません。毎回発生する定型のやり取りを機械に任せる、という判断が効いています。同じことは大企業だけの話ではありません。仕入れや外注の見積もり依頼、日程調整、社内の申請や確認のやり取りなど、決まった型で何度も繰り返す業務は、どんな会社にもあります。そうした反復作業をひとつ選び、AIに任せられないか見直してみてください。人は、AIが対応しきれない例外の判断や、相手との関係づくりに時間を使う。この役割分担ができた会社から、着実に身軽になっていきます。
先週の5本は、それぞれ別々の出来事です。ただ、並べてみると近い方を向いていました。OpenAI社のGPT-5.6が誰でも使えるようになり、SpaceXAI社のGrok 4.5がさらに価格を下げ、聞きながら話せる音声AIも登場しました。米国では、中国製AIが企業利用の半分近くまで食い込み、価格競争は国境を越えて進んでいます。日本では、AI活用の一番の壁が経営層にあるという調査が出て、NEC社の調達交渉AIのように、現場の業務がAIで置き換わる実例も出ています。高性能なAIは、安く、身近になっています。ここで動かずにいると、差は思ったより早く開きます。同じ規模の同業が、見積もりや資料づくり、問い合わせ対応をAIに任せ、空いた時間で商談を増やしていく。その間に自分たちは同じ作業を手でこなしたままだと、一年後には埋めにくい差になります。とはいえ、取り返すのに大がかりな準備はいりません。周りがまだ動いていない今のうちに、身近な仕事をひとつ、今週のうちにAIへ任せてみてください。それだけで、見える景色は変わります。
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